冷たく無色だった教室に、ぬくもりと色が添えられた。

だけど私の周りには薄くて透明の膜が出来ているみたい。


ううん、そのフィルターのこっち側には。

きっと霧崎君もいるのだと感じてしまった。


楽しそうで賑やかそうで、温かそうなあの輪の中。

私はそれをいつも近くで眺めていた。

彼も、一緒なのだろうか。



涙がぽたり、空(くう)に沈んでゆくのを見たとき。

その鈍い光を携えた瞳と視線が合う。


それが、それがなんだかとてつもなく胸を締め付けて。

思わず手を伸ばし、彼の手を取りたくなった。



そんな瞬間。


「だがさっぱりわからんな」

背中から聞こえた声は、現状をきっちりと把握していた。

そう、何も解決していない。


時計は今も進まず同じ3分を繰り返している。

まだ私たちはここに留まっている。