「いや……乾はその言い争いをしている間に気失っちまったから……何も言ってねぇよ」

ただその問いには青野君が答えた。

何も言わない私に対してか、その答えに対してか、大庭君は長い溜め息を漏らす。


「なら何故霧崎は口止めなんかするんだ? もしや乾ではなく原因は霧崎が……」

「違う……!」


大庭君の言葉に、脊髄反射の如く声が出た。

みんなも予想外だったようで、視線が私に集まる。



本当は、悲しさもある。

だってもし大庭君にも霧崎君が私をかばっているように見えるなら、彼もどこかで私が原因だと思っているかもしれないからでしょう?

そしてそれは優しさなのか、同情なのか今の私にはわからない。


だけど「違う」と言えたのは。


私のしたことは絶対に消えないことだから。

霧崎君が疑われてしまうのは、嫌だと思ったから。