「少しは落ち着けたか」

頬を拭ったところで大庭君が聞いてくる。

なるべく笑顔で頷くと、彼もちょっと微笑んで頷いてくれた。



けれど。


一瞬だけ彼は霧崎君に視線を動かして、天を仰いでから息を吐く。

その仕草に、ぴりりと背筋に何かが走った。


「乾、聞きたいことがある」

大庭君は一歩だけ私に近づいて、そう切り出した。

日下さんは私の横にいてくれ、青野君は離れたところの席に座っていた。


「……うん」

何を聞かれるのだろう。


そう思うけれど、予想が出来ないわけでもない。

大庭君の近くには、あの段ボールがあったから。


タオルを握って息を吸う。

頑張れ、自分に言い聞かす。