――――――……
――……


気づけば自分の頬が濡れていた。

瞼を開ければ、視界に入るのは茶色い机。

視線を広げれば、見慣れた教室。


「あ、弥八子大丈夫?」

声をかけてくれるのは、母親ではなく。

赤い目をした日下さんだった。



「うん……大丈夫、ありがとう」

もしかしたら長いこと眠っていたのだろうか。

既に青野君は起きていて、一番後ろの角の席で霧崎君が腕を組んで眠っていた。


「タオル、はい」

ふたりに聞こえないような小声で、日下さんは青野君から借りていたタオルを渡してくれる。

どうやら寝ながら泣いていたのに気づいてくれたらしい。


受け取ったタオルは、なんだか温かくて、冷たかった。