「……やこ……弥八子! 起きなさい、遅刻するわよ!」
重たい瞼を押し上げると、母親がいた。
言葉の勢いの割に、その顔は笑っている。
「あれ……お母さん……ベッド……?」
「もう、寝呆けてないで、お兄ちゃんは先にご飯食べてるから。弥八子も早く下りてきなさい」
「え……お兄ちゃん、部屋から出たの?」
身体を起こし、目をこすりながら聞くと母親は呆れたように「当たり前でしょ、学校行くんだから」と私の頭を小突いて部屋から出ていった。
これは夢――?
だってお兄ちゃんは、もうずっと部屋に閉じこもってて。
ご飯だって廊下に置いておくだけで。
それにお母さんが笑ってた、起こしに来てくれた、朝ご飯の準備が出来てるみたい。