「あ……もしかしたらすごいって言われるのもプレッシャーかもしれないけれど……なんて言ったらいいのかな……語彙(ごい)が少なくてごめんなさい」


座ったままだけれど、小さく頭を下げたとき、ようやく大庭君が顔を上げてくれた。


その顔がなんだか、力が入ってないように見えて。

ふっ、と口元が緩んだように思えた。



「いや、いい」

ゆっくり立ち上がって、眼鏡のブリッジを押さえながら、そう言う。



私の言葉は彼にどう届いたのだろうか。

いつもなら、自分の発言はびくびくしてしまうのだけれど。



今はちょっとだけ、落ち着いていられる。