「なっ……んなことねぇよ、乾はわかるって言ってんだし」

「いや、わかんないだろ」

青野君は少し焦ったような素振りで言ってくれたものの、すぐさま霧崎君に否定されて黙ってしまう。



うん、そうかもしれない。

でも。



「理解……なんて、確かに言えないかもしれない。だって私は大庭君じゃないから。でも、でもね」


兄の姿が脳裏に浮かぶ。

いつもなら震えるぐらい怖いのに。





「私の兄は……周りの期待に押し潰されたんだと思う。私の目の前で同じこと言ってるし……兄は家から出なくなっちゃったから。だからね、頑張ってる大庭君は、すごいと思うんだ」


さっき、泣きながら告白したことは小さくてもしっかり私の糧になっている。