私はあいかわらず、何も言えない、立ち上がることも出来ない。

私の横に立ち止まった霧崎君とは違う、彼は何も“言わない”雰囲気をかもし出していた。


背の高い青野君に襟元を掴まれ、顎の上がった大庭君。

そんな彼を険しい顔で見下ろす青野君。

ふたりの間に背筋を伸ばして入った日下さん。



まるで私は、傍観者みたい。

ただ客席にいるかのような――



「僕は、間違えたことは言ってはいない」


離れたところから、気持ち的にはずっと遠くから見ていた私にもはっきり聞こえたその言葉。



間違えたこと?



正解なんて、存在するの?