海の青を映したような夏空に、ベールのような限り無く薄い雲が張り、その部分だけが虹色に輝いていた。


お墓参りに来ている人たちが、みんな空を見上げて、吐息を漏らしていた。


丘の縁に立ち、健吾は仁王立ちして空を見つめていた。


おれと修司も、その虹色の雲に導かれるように、健吾の横に並んだ。


見下ろす景色は、絶景。


左から健吾、おれ、修司の順番に肩を並べて立尽くした。


「あれさあ、太陽の近くを通り掛かった雲が、虹色に彩られる現象なんだってさ」


太陽の光が、雲に含まれる水滴で回屈折すると起きる現象なんだってさ。


良く晴れた日にしか見れなくて、珍しい現象だよ。


昔、ばあちゃんと見たことがあるんだ、と修司は懐かしそうに笑った。


虹色に輝く薄い雲を見たのは、初めてだった。


息を呑むほど、きれいだった。


翠みたいに、美しかった。


虹色が薄い雲に滲み溶けて、きらきら、細かく屈折していた。


その中でも一際美しく、赤色が1番輝いて見えた。


修司がぽつりと漏らす。


「翠ちゃん、言ってんだよ。きっと」


そう言って、修司は消えかける彩雲を指差した。


「幸せにしてよ、って。あたしのこと幸せにしなさいよ、って。約束したでしょ、補欠って」


と、修司はおれの肩に手を回した。


「補欠、あんたも幸せになりなさいよ。夢、叶えなさいよ、補欠ってな」


そう言って、健吾もおれの肩を抱いた。


2人の親友の肩に手を回して、おれは頷いた。


そうだな。


うん。


あの日、約束したよな。


翠。


夏の夕暮れの、県立球場で約束した事、翠のことだからしっかり覚えているんだろうな。