あの激闘の夏から1年が経って、おれは大学に進学した。
春に、この海辺の街を離れた。
県内ではあるが、電車で約2時間ほどかかる県北の大学に通っている。
大学の近くのアパートで、1人暮らしをしている。
2009年、8月13日。
おれは、久しぶりに地元へ帰ってきた。
今年は梅雨明けしないまま、お盆休みを迎えた。
実家の中庭で花を摘んでいると、今も大親友の健吾と修司がやってきた。
「おす! 響也」
今年の春、健吾は地元の電車部品会社に就職した。
会社の社会人硬式野球部に入って、健吾は今もキャッチャーをしている。
「よ、健吾」
素っ気ない返事をして、おれはハサミを動かし続けた。
この花はどうだろう。
いや、こっちの花の方がいいだろうか。
ポンと肩を叩かれて振り向くと、修司が笑っていた。
「響也に花って、似合わないなあ」
「余計なお世話だ。修司、まりこちゃんと仲良くやってんのか?」
ちょっとからかってやると、修司は顔を真っ赤にした。
「ぼ……ぼちぼち」
まったく、しょうがねえなあ、なんて呆れてしまう。
野球にはあれだけ一直線に熱を注げるくせに、好きな女にはめっほう弱い。
修司は、今時めずらしいくらいシャイな男だ。
あのマネージャーのまりこちゃんの猛烈なアタックのおかげで、2人は今交際している。
修司は野球をやめて、福祉関係の資格をとるために県外の専門学校に通っている。
まりこちゃんは看護師を目指して、看護学校で奮闘しているらしい。
首筋を汗が伝う。
それにしても、いい天気に恵まれた。
雲ひとつなく、すっきりとした青空。
梅雨明けしたんじゃないかと思ってしまうほどだ。
春に、この海辺の街を離れた。
県内ではあるが、電車で約2時間ほどかかる県北の大学に通っている。
大学の近くのアパートで、1人暮らしをしている。
2009年、8月13日。
おれは、久しぶりに地元へ帰ってきた。
今年は梅雨明けしないまま、お盆休みを迎えた。
実家の中庭で花を摘んでいると、今も大親友の健吾と修司がやってきた。
「おす! 響也」
今年の春、健吾は地元の電車部品会社に就職した。
会社の社会人硬式野球部に入って、健吾は今もキャッチャーをしている。
「よ、健吾」
素っ気ない返事をして、おれはハサミを動かし続けた。
この花はどうだろう。
いや、こっちの花の方がいいだろうか。
ポンと肩を叩かれて振り向くと、修司が笑っていた。
「響也に花って、似合わないなあ」
「余計なお世話だ。修司、まりこちゃんと仲良くやってんのか?」
ちょっとからかってやると、修司は顔を真っ赤にした。
「ぼ……ぼちぼち」
まったく、しょうがねえなあ、なんて呆れてしまう。
野球にはあれだけ一直線に熱を注げるくせに、好きな女にはめっほう弱い。
修司は、今時めずらしいくらいシャイな男だ。
あのマネージャーのまりこちゃんの猛烈なアタックのおかげで、2人は今交際している。
修司は野球をやめて、福祉関係の資格をとるために県外の専門学校に通っている。
まりこちゃんは看護師を目指して、看護学校で奮闘しているらしい。
首筋を汗が伝う。
それにしても、いい天気に恵まれた。
雲ひとつなく、すっきりとした青空。
梅雨明けしたんじゃないかと思ってしまうほどだ。