花菜の声は甲高い。

この広いグラウンドいっぱいに良く通る。

隅から隅まで、まんべんなく。

ノックを受けていた部員達は自分のポジションから各々、一目散に駆け出してホームベースを取り囲むように集合した。

「次は全員でベースランニング」

花菜の声とホイッスル音が、茜色に染まったグラウンドにすうっと吸い込まれ、溶けて消えた。

おれは夢中になってダイヤモンドを駆け抜けた。

ファーストベースを蹴り、セカンドベース、サードベースを1番強く蹴ってホームベースを駆け抜けた。

そこにはもう誰も居ないのに、ブルペン横のフェンスを何度か振り返りながら、夢中になって駆け抜けた。