セットポジションに入り、集中の一球を投じた。


外角ぎりぎりに、低めのスクリューボール。


バットが空を切った。


アルプススタンドが歓声にわき、溜め息に揺れる。


ストライク。


ほうっ、と大きな息を吐ききった。


何気なしに3塁側応援スタンドからぐるりと見渡した時、1塁応援スタンドの中間辺りでふと目が止まった。


桜花大附属。


南高校の応援スタンドに、桜花大附属の野球部の姿があった。


すごい人数だ。


ざっと目を通しただけでも、90、100はいる。


桜花の野球部員たちが総出で駆け付けてくれていたのだ。


しかも、あの縦縞のユニフォーム姿で。


南高カラーの赤いメガホンを持って、応援団と一丸となり、グラウンドに声援を送ってくれていたのだ。


修司。


修司、お前もいるのか。


必死に修司の姿を探してみたけれど、あまりの多さに誰がどこにいるかなんて分からなかった。


あいつの事だ。


そこに居るに決まっている。


修司がそこに居てくれてると思うと、背中が軽くなった。


そのまま視線を流して行くと、ライトの奥のスタンドには、やっぱりその姿があった。


相澤先輩に抱きかかえられて、翠がこっちを見つめていた。


健吾が構える。


ボールを強く握り込んで、おれは一球に力を込めた。


カアン


その打球は浅い半円を描き、おれの頭上を越えて行った。


深めに守備していた勇気が、全速力で前進してくる。


ホームに背を向けて立ち尽くし、無心でおれはその打球の行方を追い掛けた。