5試合を1人で投げ続けて来たおれには、仲間の熱い援護があった。


翠という、えんのしたの力持ちがいた。


きっと、西工業のエースにも、おれたちには分からない裏舞台があったのだろう。


歯を食い縛り、涙を堪えきれずにマウンドを自ら下りなければいけなかった、ドラマがあるのだろう。


7回、裏。


ノーアウト満塁から、ゲームは再開された。


リリーフ投手はおれと同じ小柄で、右腕のサイドスロー投手だった。


今大会、初めてのサイドスロー投手に、イガのバットはリズムを崩した。


三振。


ワンアウト、満塁。


続く打者、村上もタイミングを合わせられなかったのか、サードへの凡フライでアウト。


ツーアウト、満塁。


そして、打者は3番の岸野。


ツーアウトだ。


犠打ではどうにもならないし、スクイズは無謀すぎる。


もう、転がすしかない。


監督からのサインは、打て。


頼む、岸野。


打ってくれ。


祈りながら、おれはリードをとっていた。


ピッチャーがセットポジションに入った、その時だった。


突然、体勢を回転させ、ピッチャーは3塁へ送球。


飛び出していた遠藤がとっさにベッドスライディングでベースに飛び付いたものの、タッチアウト。


場内が大歓声と拍手、大きな溜め息でごった返した。


「うあああっ」


岸野が地を踏み、バットを叩きつけた。


牽制球で刺され、この最大のチャンスを棒にふるった南は無得点のまま、チェンジ。


7回、裏。


最大のピンチに襲われた。


先頭打者を塁に出し、次打者にセンター前ヒットを許し、ノーアウト、1、2塁。


迎えた打者は、4番。