「くっそー。ゲッツーにしてやるかんな」


ベビーフェイスが「くっそー」なんて言うと、似合わなすぎてがっくりくる。


ノーアウト、1塁。


次打者は左打ちで、ショートフライ。


ワンアウト、1塁。


セットポジションに入った時、健吾が予定を変更してきた。


変えられたサインは、牽制。


セットポジションを保ちながら1塁を確認すると、遠藤が目を開いてグローブを構えている。


走者はかなり大きいリードをとっていた。


刺せるかもしれない。


健吾に頷いたあと大きくふりかぶって体勢を変え、1塁に牽制球を送った。


走者はハッとした顔をして1塁には戻らず、2塁に向かって駆け出した。


遠藤がボールを右手に握り締めながら、逃げる走者を追いかける。


2塁へ追い詰めて、ベースカバーに入っていた岸野にボールが渡った。


走者は慌ててUターン。


岸野が走者を1塁へ追い詰める。


ボールは岸野から遠藤へ渡った。


走者は2塁へ方向転換。


しかし、2塁には村上がベースカバーに入っていた。


挟まれた走者はついに窮地へ追い込まれ、1、2塁間でタッチアウト。


ツーアウト、残塁者なしとなった。


そのあと、打者をサードゴロに打ち取り、無得点に抑えてマウンドを降りた。


溢れる汗は、尋常ではなかった。


もう肩が上がらない寸前に、おれは追い込まれていた。


ズキズキ痛むなら、まだいい。


ドクドク、ドクドク、と激しく脈打つほど肩が痛み始めていた。


冷や汗が、不快な油汗に変わっていた。


指を動かすだけで、肩から背中まで痛む。


残されたイニングは、あと、3。



100 020
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
000 300
西工業


6回が終了した時、時刻はすでに14時30分を回っていた。