外角ぎりぎり。


アウトコースの直球が、浮いた。


カン


打者はその甘い直球を外角から思いっきり引っ張り、ライトのラインすれすれの長打を放った。


ファーストベースを蹴り、2塁に進み、西工業の3番打者はサードベースにスライディング。


セーフ。


日に焼けた肌に、真っ白な歯がこぼれていた。


ノーアウト、3塁。


おれの集中力は完全に切れていた。


健吾の采配で4番打者を四球で1塁へ歩かせ、5番打者と勝負することにした。


そもそも、ノーアウトで走者を出してしまったのが全ての始まりだった。


5番打者のバットに捕まった打球は、おれの頭上を低飛行し、センター前に落ちた。


あっという間の事だ。


3塁ランナーは生還し、1塁ランナーは2塁へ。


打者もセーフ。


西工業に待望の1点。


同点にされた。


相澤先輩の言葉が不意に頭をよぎった。


おれが行くまで1点もやるんじゃねえぞ。


ノーアウト、1、2塁。


続く6番打者は、ここでセーフティバントをしてきた。


確実に走者を進めた西工業。


ワンアウト、2、3塁。


7番打者が、ついに逆転の一打を放った。


夢中になって背走する大輝と勇気の真ん中を、その打球は意図も簡単に抜けて行った。


ランナーが一気に還って行く。


打者は3塁でストップ。


3塁打。


ここにきて、西工業に2点のリードを許してしまった。


ワンアウト、3塁。


悔しさと絶望と、この灼熱の暑さのせいで、決意の壁がガラガラと音を立てて崩れ始めた。


もう、いいじゃねえか。


ここまで来れたこと自体、すげえことなんだから。


弱い弱いと言われ続けてきたおれたちが、ノーシードから這い上がってきた。


あの桜花にも勝った。


今、決勝の土を踏んでいる。