練習を終えた正午すぎ、晴天。


超満員の応援スタンド。


土の地は渇き、歩くだけで汗ばむ熱気だ。


一通り変化球の確認を終えて、おれはブルペンの片隅から場内を見渡した。


ぐるりと一周。


すげえってもんじゃねえや。


これが、夏の決勝か。


そう思いながら、違和感のある左肩に右手でそっと触れた。


もう、笑いさえ込み上げてくる。


肩が、ぐつぐつ煮込まれたように熱いのだ。


前日、花菜から教えてもらったその数字を聞いて、さすがにびっくりした。


今大会が始まってから、5試合、おれは計664球を投げていたのだ。


この肩がいつまで持つか、この一試合を無事に終えることはできるのだろうか。


そう考えずにはいられないほど、おれの肩は限界寸前だった。


体はおれのものなのに、左肩だけ知らない人のやつをつけているみたいだ。


でも、健吾のミットに向かえば体はスムーズに動いてくれて、球は走っていた。


先攻なので先にシートノックを終え、ダッグアウトに戻り、後攻の西工業のシートノックを見守った。


小技をきかせた守備と詠われることだけのことはある、そう思った。


特に、二遊間のコンビネーションは、桜花の二遊間の堅さを抜いていた。


試合開始15分前、渇いたグラウンドに水が撒かれた。


スプリンクラーから噴射される水は、太陽の陽射しを受け白く輝き、グラウンドを焦茶色に濡らした。


ダッグアウトから出て、空を見上げた。


梅雨明けしたばかりの夏の空には濃い雲が浮かんでいて、少しずつその形を崩しながら移動していく。


ふわふわした雲だけではなく、薄く掃いたような筋雲も広がっていた。


ざわめきと歓声。


場内は物々しい雰囲気に包まれていた。