はあ、と大きな溜め息をもらして、なぜか健吾までもがおれの布団に侵入してきた。
「暑っつ……」
うんざりだ、と落胆した。
「よし、響也、勇気。前夜祭すっか」
明日の決勝。
お前は最後の一球に、一打に、何をかけると健吾が訊いてきた。
「ちなみに、おれは野球人生をかける」
と健吾は言い、フフンと鼻で偉そうに笑った。
「勇気は?」
健吾が訊くと、ややあってから勇気が小声で答えた。
「そっすねえ。おれは、南高校野球部の固い絆」
「けっ。年下のくせに生意気だな」
健吾がバカにしたように笑うと、勇気はすねたようにフンと鼻で返した。
2人に挟まれながら、おれは笑った。
「なに笑ってんだよ」
左から健吾、右からは勇気にドンと肩を小突かれた。
「そういう夏井先輩は、何をかけるんですか」
おれは何も答えず、ぼんやりと暗い天井を見つめた。
明日の決勝に、おれは何をかけたいのだろう。
翠のように、人生をかけてみようか。
それはそれは、数えきれないほどの案が止めどなく思い浮かんだ。
右からも左からも、痛いほどの視線を感じる。
しばらく沈黙がながれ、健吾が眠ってしまったようだった。
すうすう、寝息が聞こえてきた。
そのあと間も無く、勇気も眠りに就いたらしかった。
ぐうぐう、寝息が聞こえてくる。
言い出しっぺが先に寝てら。
一度だけククッと笑い、おれもそっとまぶたを閉じた。
大部屋は甘い香りに包まれていた。
かき氷のシロップの残り香だ。
「その瞬間になんねえと、わかんねえや」
ぽつりと呟いて、おれも眠りについた。
3人、川の字になって眠っていると、まるでグラウンドに居るような気分になった。
左に捕手、右に中堅手。
「暑っつ……」
うんざりだ、と落胆した。
「よし、響也、勇気。前夜祭すっか」
明日の決勝。
お前は最後の一球に、一打に、何をかけると健吾が訊いてきた。
「ちなみに、おれは野球人生をかける」
と健吾は言い、フフンと鼻で偉そうに笑った。
「勇気は?」
健吾が訊くと、ややあってから勇気が小声で答えた。
「そっすねえ。おれは、南高校野球部の固い絆」
「けっ。年下のくせに生意気だな」
健吾がバカにしたように笑うと、勇気はすねたようにフンと鼻で返した。
2人に挟まれながら、おれは笑った。
「なに笑ってんだよ」
左から健吾、右からは勇気にドンと肩を小突かれた。
「そういう夏井先輩は、何をかけるんですか」
おれは何も答えず、ぼんやりと暗い天井を見つめた。
明日の決勝に、おれは何をかけたいのだろう。
翠のように、人生をかけてみようか。
それはそれは、数えきれないほどの案が止めどなく思い浮かんだ。
右からも左からも、痛いほどの視線を感じる。
しばらく沈黙がながれ、健吾が眠ってしまったようだった。
すうすう、寝息が聞こえてきた。
そのあと間も無く、勇気も眠りに就いたらしかった。
ぐうぐう、寝息が聞こえてくる。
言い出しっぺが先に寝てら。
一度だけククッと笑い、おれもそっとまぶたを閉じた。
大部屋は甘い香りに包まれていた。
かき氷のシロップの残り香だ。
「その瞬間になんねえと、わかんねえや」
ぽつりと呟いて、おれも眠りについた。
3人、川の字になって眠っていると、まるでグラウンドに居るような気分になった。
左に捕手、右に中堅手。