「おす。頑張ります」


そう言って、おれは涼子さんに左手を突き出した。


「期待しています」


おれと涼子さんは、夏を約束した。


大部屋に入ると想像していたよりも賑やかで、ひっくり返りそうになった。


でかいクーラーボックスに、どでかい氷が入っていて、それを相澤先輩が金槌で砕いて機械に入れる。


機械から出てくる新雪のような氷をカップに入れるのは、ねじりはちまきをした本間先輩で。


これは、かなりレアだと思った。


2年前のエースと、1年前のエースがタッグを組んでかき氷を作っているのだから。


いちご、れもん、めろん、ブルーハワイのシロップが畳の上に並んでいた。


「お、夏井!」


おれに気付いた本間先輩が、威勢のいい声で笑った。


「ほらほら、夏井も早く並べ! なに味がいいんだ?」


「じゃあ、いちご」


だって、この色、あのタチアオイと同じ濃いショッキングピンクだから。


「よーし! 夏井には特別だ。超特大にしてやる」


そう言って、本間先輩は本当にてんこ盛りのかき氷を作ってくれた。


「これ食ったら、腹壊しそうなんですけど……」


「響也ばっかずるいっすよ! 本間先輩、おれにも」


健吾が食べ掛けの氷めろんを本間先輩に突き出した。


「これに足して下さい」


「しょうがねえなあ、岩渕は」


なんて言いつつも、本間先輩は額に汗を滲ませながら楽しそうに笑ってばかりいた。


本間先輩の背後に寄り添うように立っていた涼子さんの幸せそうな顔が、ひどく印象的だった。


2人の幸せを、心底願った。










午後21時。


「明日は6時に起床。飯は7時」


岸野からの諸連絡を受けて、消灯時間になり、大部屋は別世界のようにしんと静まり返った。