元々痩せっぽちだったのに、もう一回りも小さくなっていて、少し気がかりだった。


高校の時は極めてナチュラルな感じの化粧だった気がするのに、今はバッチリ化粧をしているし。


髪型もてんで違うし。


だから、誰なのかすぐに気付くことができなかったのかもしれない。


「大丈夫なんですか」


「うん。今、つわりがきつくて。肌もボロボロなの」


ああ、だから厚化粧なのか、と妙に納得した。


「でも、安定期に入ればバリバリよ」


「バリバリって……」


フフッと笑った涼子さんを見て、まだ若いのに、もう母親の顔をしてると思った。


女ってのは強いなと感心した。


「じゃあ、本間先輩は? 一緒に来てますよね」


おれが訊くと、涼子さんはやれやれといった感じて、肩をすくめて笑った。


「もちろん。今頃、きっと、大繁盛してると思うけど」


「大繁盛?」


「うん。大部屋で相澤くんと一緒にかき氷の屋台開いてる」


どうやら、相澤先輩が言っていた「サプライズゲスト」というのは本間先輩と涼子さんで。


「差し入れ」というのは、あまり考えつかないような奇抜な差し入れだった。


相澤先輩と本間先輩は、知り合いのおじさんから1日だけレンタルしてきた電動かき氷機をかついで、この旅館に乗り込んできたらしかった。


「夏井くんも行こう。今晩も暑いし、かき氷、冷たくて気持ちいいと思うよ」


「そっすね。行きましょうか」


そう言って、大部屋に戻ろうとしたおれを涼子さんが呼び止めた。


「夏井くん」


「はい?」


「相澤くんから聞いたの」


そう言って、涼子さんは気まずそうに話し始めた。