どんなに美しいパズルでも、たった1枚ないだけで魅力が半減する。


だから、9人は1人も欠けてはいけないのだ。


どんな時でも。


飯を食う時も、風呂も、寝る時もだ。










艶やかな白米、豆腐とワカメの味噌汁。


緑黄色野菜のサラダに、こんがり揚がったトンカツ。


デザートは、マンゴープリン。


「なあ、岸野。そのカツ、おれにくれよ」


と健吾が箸を伸ばすと、岸野は慌てて皿を持ち立ち上がった。


「誰がやるか! 図々しいやつ」


「ケチ」


すると、今度は健吾の食欲の矛先が、左隣の勇気に移った。


「なあ、勇気。おれはお前の大事な先輩だよな」


馴れ馴れしく肩を抱く健吾を睨み付けて、勇気は残りのカツを口に詰め込んだ。


あげませんよ、と勇気は言ったのだと思う。


でも、カツが詰まりすぎて何を言ってるのか分からないくらいだった。


「生意気だなあ! 勇気、覚えとけよ」


こんな時、しょうがねえなあ、なんて思うおれは結構いいやつなのかもしれない。


「健吾」


向かいに座っている健吾に声を掛けて、おれはカツの皿を差し出した。


「おれのやつ食えよ」


健吾の体格からいって、トンカツ1枚なんて朝飯前にも値しないだろう。


「油っこいの食うと胃もたれするから」


すると、健吾はキラキラした目でおれの顔をじーっと見つめた。


「響也……お前、ほんっとに優しいやつだよなあ」


この恩はいつか必ず、そう言って、健吾が皿に手を伸ばした時、岸野が止めに入った。


「夏井、それはお前が食え」


「けどさ」


「けどもクソもねえよ。お前が1番疲れてんだから」


おれの分けてやるから、そう言って、カツを2切れ、健吾の皿にポイポイと投げ入れた。


「あたしのカツもあげる」


そう言って、花菜は4切れ。


「おれも」


「おれも」


「しょうがねえなあ」