「村上」


「みんな、夏井先輩の帰りを待ってたんですよ。腹へって、ちょっとイカれてるっすけどね」


にこにこ笑って、村上が上座を指差した。


向かって右から、遠藤、大輝、昌樹。


その順番であぐらをかき座り、壁に向かって両手を合わせていた。


「あの3人は何やってんの?」


おれが首を傾げると、村上がヒソヒソと耳打ちをしてきた。


「瞑想、らしいっす」


かなりふざけたギャグ漫画のように、ズデとでも転けてやろうかと思った。


「瞑想すると、腹減ってる現実から離れられるらしいっす」


「はあ」


後輩たちはちゃんと自分のお膳の前に座っているってのに、なんて有り様かと呆れてしまった。


でも、妙に納得できた。


ナインはかなり個性的なキャラが勢揃いしている。


腹が減ると、まとまりがなくなる。


誰も手がつけられないほど、まとまりがなくなる。


「めしー!」


と叫んで、イガはムササビのように押し入れから飛び降りると、座布団の上をスライディングした。


「もう嫌! ここは幼稚園じゃないのよ!」


さすがの花菜も手に終えないほど、ナインはぐだくだだった。


けど、おれはこいつらを心底すげえと思っている。


南高校野球部ナイン。


でも、1枚皮を剥がせば、普通の17歳と18歳なのだ。


悪戯が好きで、やんちゃで、人情熱くて、勉強なんか大嫌いで。


ただの普通の高校生なのに。


一歩、そこに足を踏み出せば、別人になる。


目は鋭く敵を威嚇し、全身全霊で一球を打ち返し、死に物狂いでその一打に食らいつく。


ナインてのは、9枚のジグソーパズルなのだと思う。