ただっ広い和室に、新しい畳。


コの字型に配膳された、部員分のお膳。


「遅くなってごめん」


大広間に入って行くと、後輩たちは背筋をシャキッとして座っているのに、ナインたちは項垂れていた。


「おっせえよ! 響也あ」


お前はトドか、と突っ込みたくなった。


健吾は畳の上で肘枕をして、ぐあーと情けないあくびをして、ケツをぼりぼり掻いていた。


「翠とちちくり合ってきたのか?」


ンギャハハハ、とまるでギャグ漫画のようにふざけた笑いを、健吾がした。


そんな健吾にどしどし歩いて行って、


「バカーッ!」


と思いっきり叩いた花菜は、まるで、ちびまる子ちゃんの母ちゃんみたいに迫力があったりして。


「あー、無理。低血糖」


と岸野は言い、


「そっすね。明日は決勝だってのに。ひもじいっすよね」


と言った勇気と背中をぴったり合わせて、寄っ掛かり合って、2人とも遠い目をして天井を見上げている。


1番びっくりしたのは、イガを発見した時だ。


「きょうやあああ……」


まるで、幽霊のような声が、真後ろの押し入れから聞こえてきた。


「うおおおっ」


たまらず情けない声を出してしまったくらい、びっくりした。


「響也あ」


「イガ……」


イガは、おれの背後の押し入れの中にいて、3センチくらいの隙間から右目だけをギョロリと覗かせていた。


「びっくりさせんなよ」


こう見えても、おれは怖がりだったりする。


みんなには、秘密だけど。


バクバクする心臓を懸命に言いきかせながら、押し入れの戸を開けた。


「何やってんだよ、出て来いよ」


イガは押し入れの中の座布団の間に挟まって、小さく小さく体育座りをしていた。


片手に1本ずつ、端を握っていた。


「腹へったよ……」


へんな座敷わらしだ。


「夏井先輩」