いつだって凛々しく真っ直ぐ立っていて。


姿勢が良くて。


見るからに気が強そうで。


でも、ちゃんと女の子らしい一面もあって。


生意気で。


気高くて。


高飛車で。


でも、めちゃくちゃ可愛い一面もあって。


話し出すと切りがなかった。


翠の特徴は数え切れないほどあって、言っても言っても、次から次へとあふれてきた。


「それから、冷たそうに見えて、実は優しくて。それから……」


「今日は大雪かもな」


そう言って、相澤先輩はフロントガラスから空を見上げた。


「大雪だそ。今日の夏井は、よくしゃべるんだな」


と相澤先輩はとても可笑しそうに笑った。


それでハッとした。


自分でも呆れてしまうほど、おれは浮かれていたのだ。


恥ずかしくなってうつ向くと、相澤先輩がおれの頭をポンと弾いた。


「夏井は忙しい高校生だよな」


「何がですか」


思わず笑ってしまった。


若いのに大変だなあ、なんて、じじいのような事を相澤先輩が言うからだ。


相澤先輩だって、まだまだ若いのに。


おれと2歳しか離れていないのに。


「高校生。野球部のエース。翠ちゃんの彼氏」


一気に3役こなさなきゃいけないんだもんな、と相澤先輩は笑い続けた。


とても優しい笑いだった。


病院までの道のりは長く、1時間もかかる。


旅館を出発して約40分ほど経つと、海岸線に出た。


日本海に面した直線の国道を突き抜けると、暑い潮風がウインドウから入ってきた。


相変わらず流れているFMラジオ。


『逆転! 5回の表、ついに東ヶ丘、逆転!』


額に、汗がにじむ。


ドンドン、ドンドン、太鼓の音。


どよめきと歓声。


解説者の弾む声。


『またゲーム展開が荒れてきましたね』


『本命の桜花も姿を消したくらいですからね。今年の夏は何が起きるか分かりませんよ』