「修司……?」


「健吾、行くぞ」


戸惑いを隠しきれない健吾の手を引っ張って、おれはその横を駆け出した。


インタビューに受け答えする修司の真横を通過した時、おれは縦縞のそいつを誇りに思った。


宇宙一の、野球馬鹿だと思った。


「最高の夏でした!」


修司。


お前は、きっと、何年経っても、何十年経っても、色褪せない男なんだろうな。


「なあ」


と健吾が気落ちした声で、おれのスポーツバッグを引っ張った。


「うん?」


「修司のやつ、本気かな。まじで野球やめんのかな」


「本気だろうな」


「なんでかな」


「さあな。でも、修司らしいと思わないか? 潔く散るあたりが」


おれが言うと、健吾は「ああ」と頷き、目を潤ませた。


バスに乗り込むや否や、監督がおれに言った。


「夏井、宿に着いたら、すぐにおれの部屋に来なさい。話がある」


「あ、おす。わかりました」


空いている座席に座り、空を見上げた。


じりじりと火傷しそうなほどの、きつい陽射し。


全開に開け放たれたバスの窓からは、蝉時雨が入ってくる。


夏の青空に、入道雲。


バスに揺られながら、おれは目を閉じた。


頭には、あの一言がいつまでもリフレインしていた。






『最高の夏でした!』



炎天下の下で、親友が流した涙は大空にたかく登って、アーチを描き、潔く散った。