校歌斉唱を終えて、おれたちは1塁側スタンドに駆け出し、一例に並んで頭を下げた。
「ありがとうございました!」
その声は空高く昇り、青空の向こうにぐんぐん吸い込まれて行った。
ベンチに戻り、軽く肩ならしをし、アイシングをして、おれはダッグアウトを出た。
通路には地元スポーツ新聞社の記者たちが待ち構えていて、おれや監督に集まってきた。
「夏井くん、大本命と言われていた桜花に勝利した、今の気持ちを聞かせてください」
「中盤、肩を気にされていましたね。やはり、連日の完投が影響しているのですか?」
なんだ、これ。
今まで、南高校なんか見向きもしなかったくせに。
桜花に勝ったとたん、芸能人のスキャンダルみたいに扱いやがって。
左肩をアイシングしながら、おれは気分を害していた。
肩はひんやりして心地いいのに、心はぐつぐつと煮えたぎっていた。
「頑張ります」
ぶっきらぼうに一言だけ言って、おれはその場を立ち去った。
元々、話すのは苦手だし、感じが悪いとか生意気だととられても仕方がない。
それよりも、肩が痛くて熱くてそれどころじゃない。
通路をスタスタと突き進み、中央出入口に差し掛かろうとした時、そこに桜花のナインがおれたちを待っていた。
背番号、4。
桜花の主将が、口を開いた。
「頑張って! おれたちの分も頑張って、絶対、甲子園に行ってくれ」
桜花はプレーだけでなく、礼儀の正しさも紳士的なところも、県1の男前だ。
桜花の選手たちの笑顔は、負けたチームだとは思えないほど、爽やかで新鮮だった。
「頑張れよ!」
「甲子園行けよ」
「絶対、勝てよ」
1人1人と握手して抱き合い、桜花ナインは中央出入口から去って行った。
散り行く様も、いさぎよかった。
「響也」
「ありがとうございました!」
その声は空高く昇り、青空の向こうにぐんぐん吸い込まれて行った。
ベンチに戻り、軽く肩ならしをし、アイシングをして、おれはダッグアウトを出た。
通路には地元スポーツ新聞社の記者たちが待ち構えていて、おれや監督に集まってきた。
「夏井くん、大本命と言われていた桜花に勝利した、今の気持ちを聞かせてください」
「中盤、肩を気にされていましたね。やはり、連日の完投が影響しているのですか?」
なんだ、これ。
今まで、南高校なんか見向きもしなかったくせに。
桜花に勝ったとたん、芸能人のスキャンダルみたいに扱いやがって。
左肩をアイシングしながら、おれは気分を害していた。
肩はひんやりして心地いいのに、心はぐつぐつと煮えたぎっていた。
「頑張ります」
ぶっきらぼうに一言だけ言って、おれはその場を立ち去った。
元々、話すのは苦手だし、感じが悪いとか生意気だととられても仕方がない。
それよりも、肩が痛くて熱くてそれどころじゃない。
通路をスタスタと突き進み、中央出入口に差し掛かろうとした時、そこに桜花のナインがおれたちを待っていた。
背番号、4。
桜花の主将が、口を開いた。
「頑張って! おれたちの分も頑張って、絶対、甲子園に行ってくれ」
桜花はプレーだけでなく、礼儀の正しさも紳士的なところも、県1の男前だ。
桜花の選手たちの笑顔は、負けたチームだとは思えないほど、爽やかで新鮮だった。
「頑張れよ!」
「甲子園行けよ」
「絶対、勝てよ」
1人1人と握手して抱き合い、桜花ナインは中央出入口から去って行った。
散り行く様も、いさぎよかった。
「響也」