かなり強い勢いで吹っ飛んだっていうのに、しりもちをついたってのに、痛みすら感じない。


それくらい、おれは疲労感と脱力感に支配されていた。


「夏井先輩……おれ、生きてて良かったっす」


グローブを抱きしめ、勇気が泣いた。


吹っ飛んだおれを、岸野と健吾が抱き起こす。


「夏井、立て」


「決勝だぞ! 響也! ついに決勝だ!」


バックスタンドの真上で、電光掲示板が逆光を浴びて輝いていた。


桜花大附
042 010 001 00000
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000 043 100 0001×




桜花8―9南



まだ実感がわかなくて、おれは呆然としたままベンチを見つめた。


ベンチ前に突っ立って、花菜が泣いていた。


喜びを爆発させて整列に向かうナインがマウンドからはけた時、おれたちが勝利したのだと、初めて実感した。


セカンドベース手前で、背中を震わせて、縦縞の背番号8が泣き崩れていた。


グラウンドの乾いた土を手でむしり、ぎゅっと握り締めて、修司は歯を食い縛っていた。


桜花のナインのうち数名が抱き起こそうとしているのに、修司は立ち上がらなかった。


違う。


立ち上がらなかったのではなくて、修司は立てないのだ。


「修司、ナイスファイト」


「修司。整列だ」


「修司、泣くな! お前がいなかったら、ここまで来れなかったんだ」


修司、修司、修司。


修司が、どんなに慕われているのか、その様子を見れば一目瞭然だった。


でも、修司はただ歯を食い縛って、その場から立ち上がれないほどだった。