―駄菓子屋でガリガリくん買って帰ろうぜ。


―え、先生に見つかったら、怒られるぞ。


―大丈夫だって。


―だって、おれたち、1人じゃねえんだよ。


―3人でやれば、何も怖くねえよ。


―そっか!


―おれたち、チーム青春ラインだもんな!


野球も、勉強も、良いことも、悪いことも。


いつも3人は一緒だった。


泥だらけのユニフォームが、おれたちにとって1番のおしゃれだった。


3人で肩を組んで笑いながら家に帰るのが、おれたちの生きがいだった。


修司。


あの日のお前の笑顔、おれ、忘れた日は1日もねえよ。


修司。








「修司……」


目頭が熱くなり、その懐かしい光景が滲んで消えた。


目をゆっくりと開ける。


確かめるように慎重に開けないと、泣いてしまいそうだった。


懐かしくて、あまりにも温かい想い出だったから。


マウンドに崩れ落ちて、大声を出してわんわん泣いてしまいそうだった。


奥歯と唇を同時に噛んだ。


ボール。


ツーストライク、ワンボール。


忘れていた。


勝ち負けばかりにこだわるようになったのは、いつからだったのだろう。


打たれる事が怖くて、三振ばかりにこだわって。


忘れていた。


真っ向勝負する時の眩しい気持ちを、忘れていた。


健吾からのサインは、スライダーだった。


でも、おれは首を振った。


スライダー。


首を振る。


カーブ。


違う。


シュート。


だめだ。


スクリューボール。


だから、違うんだって。


そんなんじゃない。


おれが修司と勝負したいのは、そんな細工だらけのひねくれた一球じゃない。


「直球だろ!」


おれみたいな阿呆なエースは、どこにもいないと思う。


健吾も修司も、目を丸くしていた。