あどけなさ全開で、無邪気に笑っていた。


中学のグラウンドは、ソフトボール部と半分ずつ使っていて、西陽に面した方が野球部のグラウンドだった。


ベンチなんていう立派な物はなくて、座る物といえば、古くなって使えなくなったような教室の椅子。


バックネット裏に、お父さんたちが作ってくれた、手作りの点数板。


砂にまみれた、白いチョーク。


錆びたラインカー。


グラウンド整備用品の、トンボ。


バット、軟式野球ボール。


西陽が燦々と突き刺さる、静かなグラウンド。


練習が終わり、健吾、おれ、修司。


右からその順番で、泥だらけの練習着で肩を組ながら、グラウンドを去ろうとしている。


「なあ! 響也、健吾」


明るくて、やけに興奮気味の声が聞こえてくる。


中学生の修司だ。


「おれたち、ずーっと最強のともだちだよな」


中学生とはいえ、修司はやっぱり男前だ。


「おれたち、最強の3人だよな」


「「あたりまえだろ」」


おれと健吾が、声を揃えて笑った。


「青春だ! せいしゅんラインだなあ」


突然、まさしく青春じみた事を言い出した修司に、おれと健吾が同時にぶはっと吹き出す。


「なんだ、それ! だっせえ」


健吾が言い、


「なにが青春だよ」


とおれが畳み掛ける。


「ださくねえよ」


修司は立ち止まり、振り向いて夕日をうんと浴びているグラウンドを指差した。


まず、ホームベースを指差した。


「健吾」


次に、マウンド。


「響也」


そして、最後に外野の要を指差して、修司は日に焼けた顔で笑った。


「おれ!」


捕手、投手、中堅手。


健吾、響也、修司。


「この一直線は最強だろ? おれたちのラインだ。青春ライン」


おれたち、地球最強の3人だよな。


中学3年生の春、練習後、茜色に燃えるグラウンドで、そう修司は言った。