大丈夫。


まだ、まだまだ、やれる。


おれは頷き、スクリューボールを投じた。


「ストラーイク!」


主審の声でさえすうっと埋もれてしまうほど、場内は悲鳴と歓声と溜め息でどよめいていた。


「はあ?」


思わず声を漏らして、おれは健吾のサインに首を振った。


また、スクリューボールか?


連続で?


バカか。


いくらスクリューでも、打たれるぞ。


でも、健吾は執拗にスクリューボールのサインばかりを出してくる。


しつこい。


表情を変えずに、おれはチッと舌打ちをした。


しぶしぶ投じたスクリューボールは、要らない力が抜けて、かなりいいコースに決まった。


14イニング投げ続けてきたとは思えないほど、球威があった。


自分でも信じられないほどだった。


その一球をフルスイングして、桜花の打者はツーストライクと追い込まれた。


3塁側ベンチが溜め息に埋もれる。


おれが3球目に投じたスクリューボールを、桜花の打者はまたフルスイングした。


3球、三振。


ツーアウト。


「響也! ナイス、ナイス」


汗みどろになりながら、健吾が駆け足でマウンドに向かってきた。


「健吾! スクリュー3連続はないだろ! 打たれてたら……」


どうするつもりだったんだよ。


「まあまあ! おれ、悪いようにはしねえからさ。だから、信じて投げてくれよ」


そう言って、健吾はおれのグローブに試合球をポンと置いた。


「お前のスクリュー。右打者はタイミングがずれるって、気付いたんだ」


「え……」


「あと、1つだな。踏ん張ろうぜ」


ポン、とおれの左肩を叩いて、健吾はホームへ戻って行った。


この時ほど、健吾をすげえやと思った事はないかもしれない。