1塁側、応援スタンドから歓声がわきおこっていた。


固まるおれの肩をポンとミットで叩いて、


「今日、全校応援なんだとさ」


そう言って、健吾は陽光が降り注いでいるブルペンへ駆け出した。


「響也、最終の確認しようや」


「おし」


総勢、約700の全校応援団。


ベンチ入りできなかった、南高野球部員たち。


相澤先輩率いる、OB。


親の会。


赤いメガホンを持ち、応援スタンドを埋めていた。


こんな声援を送ってもらったのは、初めてだ。


はなはだしく、興奮した。


でも、それよりもすごいのは桜花のスタンドだった。


さすが、県内1のマンモス校だ。


全校生徒だけでも、軽く約1900人。


OBの多さも半端じゃないどころではない。


場内は異様な興奮と熱気に包まれていた。


まだ、試合開始されたわけじゃないのに。


これが、夏なのか。


これが、夏の準決勝なのか。


2年前、応援スタンドで見た光景とは、天と地だ。


太陽と月だ。


高い場所から見下ろすのではなく、低い地から空を見上げる。


これが、夏なのか。


熱い。


のどの奥が焼けただれてしまいそうだ。


桜花の応援スタンドが、やけに騒がしい。


ブルペンで投球しながら見てみると、納得した。


ベンチ前で、縦縞の背番号8がフルスイングしている。


修司だ。


ブウン。


ブウン。


こっちまでスイングの音が聞こえてきそうなほど、鮮やかに修司のバットが夏の空を切る。


そのひと振りひと振りに、桜花のスタンドがどよめく。