玄関先へ飛び出すと、もう、みんながきれいにからりと整列していた。


「おっそーい! もう、何やってんのよ」


花菜に背中を叩かれて、おれと相澤先輩は苦笑いしながら列に続いた。


「えー、それでは! 南高ベスト4入りを祝しまして、スイカの種飛ばし大会を開催致します! 一同、拍手」


岸野のでかい声に答えるように、ナインがわあっと手を叩いた。


「では、我らがマネージャー、相澤花菜。試合開始のホイッスルをお願いします」


「はいはいはーい」


右手を突き上げて、花菜がナインの前に飛び出し、ジャージのポケットからホイッスルを取り出した。


「ではでは、参りまーす! 恨みっこなしよ! 構え!」


みんなが腕を腰に回して組み、胸を張り、口を突き出した。


膝を曲げて、勢いをつける体勢をとるやつもいる。


「ピイッ」


やっぱり、短命なホイッスルが鳴り、あちこちにスイカの種が飛び散った。


「おー!」


1番遠くに飛ばしたのは、勇気だった。


「やべっす! 明日、ホームラン打てそうな気がしてきたっす」


ギャアギャア騒いでいると、背後からドスのきいた怒鳴り声が飛んできた。


「うるさい! お前ら、何をやっとるんだ!」


般若のお面のような形相の監督が腕組みをして、玄関に立っていた。


その後ろで、支配人や旅館の従業員たちが口元をおさえてクスクス笑っている。


「少しは緊張感を持て! 部屋に戻りなさい、バカどもが!」


全員、肩をすくめて背中を丸めながら、おずおずと引き返していく。


これが激闘を勝ち抜いて、やっとの思いでベスト4をつかんだ者たちだとは思えない。


情けなさ極まりなかった。


ナインが部屋へ引き返す中、最後尾を歩いていたおれと花菜を、監督と相澤先輩が呼び止めた。


「夏井、マネージャー」