頭から溶いた小麦粉のような泥を被った修司は、辺りを見渡し、呆然としたあと、飛び付いてきた1塁コーチャーに抱き起こされたあと、ガッツポーズを決めた。


試合が決まると、桜花のナインは迷わず修司に駆け寄って、抱き合い、泥まみれになって歓喜に狂った。


北工業
000 000 002 2
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
100 000 002Ⅹ 3
桜花大附



夕立のような土砂降りの中、泥にまみれた一球が内野を抜けた瞬間。


県立球場内に、耳をつんざくほどの大歓声がわき起こり、地を揺らした。


ノーシードから着実に駒を進めて来た、北工業。


甲子園常連で横綱、桜花。


土砂降りの中の激闘。






桜花 主砲平野

サヨナラ勝ち



北工業

悲願の4強入り果たせず








大歓声の中、おれは気が狂いそうなほど興奮し、そして、いつになく冷静な目で修司の背中を見つめた。


雨に打たれたマウンドで、北工業のエースが我を失ったように泣き崩れていた。


修司。


やっぱり、お前はすげえ。


おれたちが、お前に勝つ確率はどれくらいなのだろうか。


雨は時雨のように、しつこく、強く、降り続いた。


翠の意識が回復しないまま、おれたちは奇跡の4強入りを果たした。










南高 桜花大附

東ヶ丘 西工業




4強出揃う



明日火花




その日の夕方の一面の片隅には、ついにベスト4の高名がでかでかと載った。