夕刊には、こう、書かれていた。






清陵 夏の怖さ痛感

ノーシード南高

激闘の延長戦を制す





これで、おれたちは、一年ぶりのベスト4進出となった。


その試合後、おれたちは翌日の対戦校をこの目で確認する事にした。


明日、準決勝でおれたちと対決するのはどちらなのか、を。


守りあぐね、攻めあぐね、這いつくばりながら駒を進めてきたおれたち。


そして、修司率いる桜花もまた、順調にAブロックを制して駒を進めてきていた。


その試合で、おれは度肝を抜かれることになるのだった。


バックスタンドの中間あたりの席に、南高ナインが肩を並べて座った。


試合開始と共に、西の空色が曖昧になってきた。


隣に座っていた健吾が、おれの肩をドンと強めに小突いた。


「なんか、雨降りそうだよな」


「うん」


7月26日


第2試合目


準々決勝


13時45分 プレイボール


先攻 私立桜花大学附属高等学校


後攻 県立北工業高等学校


夏は、怖い。


本当に、そう思う。


県立北工業高等学校


なぜ、北工業がここまで駒を進めて来れたのか。


北工業は、お世辞にも強いとは言えない。


秋も、春も、地区大会も、全て初戦敗退に終わっている。


おれたち南高も何度か練習試合をしたことがある。


しかし、負けたことがない。


でも、今、王者である桜花と対戦しているのは、あの、北工業なのだ。


高校野球の名門校が初戦であっさり姿を消す事も、無名の弱小校が甲子園出場を果たすことも、まれだとは言えないのだから。


どんなに弱いチームでものしあがって来るし、常に強いチームでさえ敗北して、夏に終止符を打つ。


だから、夏は怖い。


夏ほど、怖いものはない。


雨が降ったなら、なおさらだ。