7月26日


準々決勝


先攻 私立清陵高等学校


後攻 県立南高等学校


県立球場の上空には、朝から分厚い雨雲が広がっていた。


曇天の空の下、夏の熱風がバックスタンド方向から、ホームベースに向かって、穏やかに吹き抜けていた。


清陵は毎年ベスト4に入る、桜花に続く野球の名門だ。


さすがに、前回までの敵のようには楽に勝たせてはくれないだろう。


それは、誰もが思っていたのだと思う。


あの、健吾でさえ、攻めあぐねいた一戦となった。


先制したのは、強敵、私立清陵高等学校だった。


初回、1死3塁から、4番打者のライトオーバーで先制された。


清陵
100 0
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
000



しかし、4回裏、村上がデッドボールで出塁し、大輝が右中間を抜く長打で南は同点にした。


その後が、問題だった。


同点になってからは、両エースの投手戦となり、今大会初の延長戦となった。


この一戦を捨てて、マウンドを下りたい。


そんな事を一瞬でも考えてしまうほど、回を終えるごとに苦しかった。


さすがに4試合連続登板は、いよいよ、おれの肩に重みを生じさせた。


しかし、おれの左腕を長い呪縛から解き放ってくれたのは、頼れる主将、岸野だった。


「待ってろよ、夏井。みんなで、楽にしてやるからな」


そう言って、岸野はバッターボックスに立った。


12回、裏。


岸野の渾身の一打が、バックスタンドに放り込まれた瞬間、悲鳴なのか歓声なのか区別がつかないほどの音響が、県立球場を揺らした。


サヨナラホームラン。


清陵
100 000 000 1
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
000 100 001Ⅹ2



長い、蛇のとぐろのような試合がようやく終わった。


投げても投げても、どんなに投げても。


ゴールが見えない迷路をさまよっているような、辛い一戦だった。