ダッグアウトからグラウンドに飛び出して行くナイン。


「ピィーッ」


プレイボール!


背後で、花菜が長く長く鳴らしたホイッスルが、熱戦開始の合図に聞こえた。


「おす!」


大きく息を吸い込み、ベンチに入る。


「響也、肩ならそうぜ」


「うん」


健吾と共にベンチを飛び出し、ブルペンに立、おれは空を仰いだ。


翠。


おれ、絶対に勝つ。


翠が辛い時にそばにいてやれなくて、ごめん。


でも、絶対に勝つから。


だから、待っててな。











県立球場 Bブロック


7月23日


第1試合


先攻 県立明成高等学校


後攻 県立南高等学校


午前10時


プレイボール



「整列」


試合開始の礼と共に、おれたち南高校ナインはそれぞれの位置に散った。


与えられた数を投じ、アルプススタンドをぐるりと見渡す。


平日で、まだノーシード対決だからなのか、さほど注目されている試合ではない事が分かる。


両校のベンチ入りできなかった部員たち、OBや、親の会、応援団。


広いスタンド席をぽつりぽつりと埋めていた。


「響也」


と健吾が白球を高く突き上げながら、マウンドに駆けてきた。