「先発は、夏井だ。夏井の打順は9番。他は変更なし。いいな」


早くフィールディングの準備をして、グラウンドに出なさい。


そう言って、監督はロッカールームを出て行った。


新しくメンバー表を書き直した花菜は、本当に大至急、本部に向かってロッカールームを飛び出して行った。


ナインと控えのメンバーが、一勢に動き出す。


各々のスポーツバッグを背負い、バットケースを持つ者、ヘルメットケースを持つ者。


道具類の音だけがロッカールームに響いていた。


声を出す者も、おれに声をかける者も、誰一人としていない。


でも、責める者も一人もいない。


一瞬しーんと無音になったロッカールームに、岸野の声が響いた。


「まったくよお! はた迷惑なエースだぜ! 背番号、返上しやがれってんだ!」


すると、ナインたちがどっと笑った。


「ほっ……本当にごめん!」


深々と下げたおれの頭をバシーッっと平手打ちして、岸野はロッカールームを飛び出して行った。


「頼むぜ! へなちょこスライダー野郎!」


岸野の背中で、4が神々しく輝いていた。


ファースト、遠藤がおれの額をベシッとはたく。


「まあったく、心配かけやがって」


セカンド、村上がおれの肩をポンと叩く。


「まあ、さほど心配してなかったですけど。夏井先輩は逃げないって信じてましたから」


サード、イガがおれの頬をつまんで引っ張る。


「よっ、いなせだねー! そのポーカーフェイス!」


ライト、昌樹がおれの胸を肩で小突く。