翠のばあちゃんは、おれの事を知っているらしかった。


さえちゃんと翠から耳にタコができるほど、おれの話を聞いているのだそうだ。


少し会話が弾み出した頃、おれはハッとして訊いた。


「あの、さえちゃん、大丈夫なんすか?」


『え?』


と翠のばあちゃんはすっとんきょうな声を出した。


『冴子?』


「はい。あかねちゃんが言ってたんですけど。さえちゃんが危険だとか、何とか」


ややあって、翠のばあちゃんから、本当の事を告げられた。


『違うのよ。冴子は大丈夫』


「あ、そうなんすか、何だ、良かった」


『危険なのは……翠』


「え……」


つい一時間ほど前、西中央総合病院から、翠の自宅に電話があったらしいのだ。


翠の容態が急変した、とても危険な状態だ、と。


それで、慌てたさえちゃんは、小さな2人をばあちゃんに預けて、家を飛び出して行ったらしかった。


「ちょっと待ってくださいよ。どういう事っすか? 夕方は元気でしたよ」


少し荒々しい口調で言うと、翠のばあちゃんは弱々しく答えた。


『私にも、まだ連絡がないのよ。ただ、意識が無いんですって』