だから、今日も、得意ねイタズラ電話だと思った。


でも、違った。


『たいへん! たいへんだよう!』


いつものイタズラ好きな声とは、少し違っていたからだ。


「どうした? さえちゃんは?」


『びょーいんにいったの』



ああ、翠のとこに、さえちゃんは居るのか。


「そっか。ご飯は食べたの?」


さえちゃんがまだ翠のところから帰って来なくて、ご飯を食べれずにいるのだろうか。


それで、おれに電話して来たんだろうか。


『ハンバーグたべたよ』


「そっか。じゃあ、どうした? 何かあったの?」


おれが訊くと、あかねちゃんは黙り込んでしまった。


うーん、うーん、と何度も繰り返して、それから「あっ」と声を上げた。


『きょー、あのね、あのね』


「うん?」


『キケンてなあに?』


キケン?


危険、のことだろうか。


「うーん……危険は、あぶないよってこと」


分かる? 、と訊くと、あかねちゃんは「うん」と言った。


危険、は分からないらしいが、あぶない、は分かるらしい。


『じゃあ、みどりねえちゃん、あぶないのかなあ』


「翠?」


『うん。おかあさんがね、キケンでね。みどりねえちゃんがね、びょーいんなの。だからね、ハンバーグだったんだよ』


「なになに?」


『おばあちゃんがね、だからね、おせんたくしているの』


さっぱり、ちんぷんかんぷんだ。