おれは父さんを睨み付け、その手を叩き、一目散に自分の部屋に駆け込んだ。
「ちきしょう! 何でだよ」
携帯電話とグローブを持ち、おれは再び家を飛び出した。
自転車に飛び乗ったおれを、父さんが呼び止めた。
「響也!」
「何だよ」
「どこに行く気だ」
「うるせえ! ほっとけや!」
おれはイカれたように怒鳴り散らし、叫んで、傘もささずに自転車を走らせた。
自転車を加速させながら、無意識に電話をかけていた。
ちくしょう。
景色なんて、もう無くなった。
ソメイヨシノの淡いピンク色も、葉桜の目が冴える抹茶色も。
全部が白黒になって見える。
トゥルルル、と一般的な呼び出しコールを3、4回きいたあと、1番信用しているあいつの声に、ひどく安心した。
『おう、響也。休みに電話してくるなんて、珍しいな』
そう言った健吾の後ろで、さっきおれの家のリビングでも流れていた同じワイドショーの音声がした。
「健吾」
『どうした?』
「今、暇?」
『暇だわー。練習が休みだとやる事ねえよ』
なんて最高のタイミングだろうか。
「じゃあ、今からグラウンド来いよ」
『はあ? 今日、練習休みだぜ。つうか、雨が』
健吾の言いたい事は、分かっている。
この雨降りなのにグラウンドか? 、と健吾は笑い飛ばす気が満々なのだろう。
でも、それを聞かずに、おれは怒鳴っていた。
「いいから来いよ!」
もう、冷静ではいられなかった。
「ブルペンで待ってる。絶対来い! 来るまで待ってるからな」
そして、一方的に電話を切って、電源もオフにした。
「ちきしょう! 何でだよ」
携帯電話とグローブを持ち、おれは再び家を飛び出した。
自転車に飛び乗ったおれを、父さんが呼び止めた。
「響也!」
「何だよ」
「どこに行く気だ」
「うるせえ! ほっとけや!」
おれはイカれたように怒鳴り散らし、叫んで、傘もささずに自転車を走らせた。
自転車を加速させながら、無意識に電話をかけていた。
ちくしょう。
景色なんて、もう無くなった。
ソメイヨシノの淡いピンク色も、葉桜の目が冴える抹茶色も。
全部が白黒になって見える。
トゥルルル、と一般的な呼び出しコールを3、4回きいたあと、1番信用しているあいつの声に、ひどく安心した。
『おう、響也。休みに電話してくるなんて、珍しいな』
そう言った健吾の後ろで、さっきおれの家のリビングでも流れていた同じワイドショーの音声がした。
「健吾」
『どうした?』
「今、暇?」
『暇だわー。練習が休みだとやる事ねえよ』
なんて最高のタイミングだろうか。
「じゃあ、今からグラウンド来いよ」
『はあ? 今日、練習休みだぜ。つうか、雨が』
健吾の言いたい事は、分かっている。
この雨降りなのにグラウンドか? 、と健吾は笑い飛ばす気が満々なのだろう。
でも、それを聞かずに、おれは怒鳴っていた。
「いいから来いよ!」
もう、冷静ではいられなかった。
「ブルペンで待ってる。絶対来い! 来るまで待ってるからな」
そして、一方的に電話を切って、電源もオフにした。