あいつも、いる。

「修司」

球場の入り口で健吾とじゃれていると、声をかけられ振り向いた。

修司だった。

「響也、健吾。待ってたぜ」

白地に黒い縦軸が入り、胸元には黒い刺繍で「桜花大附」と名前が入ったユニフォーム。

全国にも名が知れている高校のユニフォームは、威圧感がすごい。

もう完全に桜花色に染められた修司が、おれ達の前で微笑んでいた。

相変わらず、片方にだけできるえくぼがよく目立っている。

部員達はそのユニフォームに圧倒され、目を丸くして固まっていた。

修司に飛び付いたのは、勿論、健吾だった。

「修司!」

「おう、健吾。久しぶり」

「久しぶり! うわ、やっぱ桜花のユニフォームは威圧感あるなあ」

健吾は言い、修司のユニフォームにべたべた触った。

「そういう人懐っこいとこ、健吾は変わってないなあ。懐かしいぜ」

と修司は言い、屈託のない笑顔で健吾を抱き締めた。

抱き締めながら修司は、健吾の肩越しにおれを見つめた。

「響也。やっと同じフィールドに立てるな。待ちくたびれた」

「待たせて悪かったな」

おれ達は3人で握手を交わし、睨み合った。

昔、同じグラウンドを駆け回った最高の仲間として。

そして、現在の最強のライバルになった証として。

予定時刻通りに開会式は行われ、今回の出場校は例年を上回る52校だった。

県内4つの球場でトーナメント式で試合は行われることになっている。

おれ達は市営球場のAブロック。

修司達の桜花は県立球場のBブロック。

もし、お互いに順調に勝ち進んだとして、次に顔を合わせるのは準決勝だ。

「響也、健吾。絶対、勝ち進めよ。準決勝で会おうな。待ってる」

開会式直後、バスに乗り込むおれ達に駆け寄って来た修司は、握手を求めた。

でかくて、ごつい手のひらだ。

グローブなんか使わなくても強烈なイレギュラーした打球に食らい付いていきそうに、修司の手は大きくて広かった。

「待ってろ! 準決勝で会おう」

健吾が言い、おれが続けた。

「修司こそ、絶対勝ち進めよな」

「当たり前だろ」