それくらい、この番組におれは憧れて、欲しくてたまらなかった。
1
その1本線の数字はどこにでもありふれているものなのかもしれない。
しかし、おれにとっては果てしなく遠く、くらくら目眩がしてしまうほど眩しい数字なのだ。
欲しくてたまらなかった。
ずっと、だ。
「夏井。おれはお前の左腕にかけてみようと思ってる。1年からよく頑張ったな」
「おす」
「エースの自覚を持ちなさい、夏井」
髭面監督は、普段から無口で怒ると怖い。
他人に厳しく、自分にはもっと厳しく。
それが口癖だ。
そんな鬼監督からの思いがけない言葉に、おれは不覚にも涙してしまった。
「甲子園に行こう、夏井」
涙がとまらなかった。
「泣くんじゃない、夏井! お前と岩渕は、もっと強いバッテリーにならんといかん。おれは信じてる」
「……はい!」
笑えるけれど、鬼監督が優しい天使に見えた。
泣いているおれに、ずっとライバル関係を保ってきた翼が、涙目で握手を求めてきた。
「響也、おめでとうな」
「ありがとな」
「おれ、お前が嫌いだったよ。でも、今はそれなりに好きかもしれない」
おれは翼が居なかったら、この背番号を手にできなかったのだろう。
翼とは因縁のライバルだった。
いつも火花を散らして、ブルペンの取り合いばかりしてきた。
口もきかない日が何日も続いたこともあった。
「翼、おれはもっと嫌いだったよ。でも、これからは二枚看板でやってこう。助けてくれ」
翼のごつごつした手を強く握り返しお互い微笑んだあと、翼が涙をぼろぼろこぼしながら言った。
「お前の後ろには最強の仲間が居るってこと、忘れるなよ」
「ああ」
「お前の肩が動かなくなってもおれが居るってことも。1人相撲だけはするな」
みんなで甲子園行こうぜ、そう言って、翼はアンダーシャツの袖で汗と涙を拭い去った。
後ろを振り返れば、仲間が居た。
この世の幸せを独り占めしたような顔をして、みんな笑っていた。
もしかしたら、おれ達は最高のチームに恵まれたのかもしれない。
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その1本線の数字はどこにでもありふれているものなのかもしれない。
しかし、おれにとっては果てしなく遠く、くらくら目眩がしてしまうほど眩しい数字なのだ。
欲しくてたまらなかった。
ずっと、だ。
「夏井。おれはお前の左腕にかけてみようと思ってる。1年からよく頑張ったな」
「おす」
「エースの自覚を持ちなさい、夏井」
髭面監督は、普段から無口で怒ると怖い。
他人に厳しく、自分にはもっと厳しく。
それが口癖だ。
そんな鬼監督からの思いがけない言葉に、おれは不覚にも涙してしまった。
「甲子園に行こう、夏井」
涙がとまらなかった。
「泣くんじゃない、夏井! お前と岩渕は、もっと強いバッテリーにならんといかん。おれは信じてる」
「……はい!」
笑えるけれど、鬼監督が優しい天使に見えた。
泣いているおれに、ずっとライバル関係を保ってきた翼が、涙目で握手を求めてきた。
「響也、おめでとうな」
「ありがとな」
「おれ、お前が嫌いだったよ。でも、今はそれなりに好きかもしれない」
おれは翼が居なかったら、この背番号を手にできなかったのだろう。
翼とは因縁のライバルだった。
いつも火花を散らして、ブルペンの取り合いばかりしてきた。
口もきかない日が何日も続いたこともあった。
「翼、おれはもっと嫌いだったよ。でも、これからは二枚看板でやってこう。助けてくれ」
翼のごつごつした手を強く握り返しお互い微笑んだあと、翼が涙をぼろぼろこぼしながら言った。
「お前の後ろには最強の仲間が居るってこと、忘れるなよ」
「ああ」
「お前の肩が動かなくなってもおれが居るってことも。1人相撲だけはするな」
みんなで甲子園行こうぜ、そう言って、翼はアンダーシャツの袖で汗と涙を拭い去った。
後ろを振り返れば、仲間が居た。
この世の幸せを独り占めしたような顔をして、みんな笑っていた。
もしかしたら、おれ達は最高のチームに恵まれたのかもしれない。