「次、5番。サード、五十嵐佑」

「よしきた! あざーす」

さすが、瞬発力ナンバーワンのイガだ。

ピョンピョン飛び跳ねながら、花菜の元へ向かった。

「次、6番。岸野健。頼むぞ、キャプテン」

「うす」

岸野がクールを装って返事をすると、花菜は自分の事のように喜んだ。

先輩達が抜け、岸野はその面倒見の良さからキャプテンになった。

「次、7番。レフト、水沢大輝(みずさわだいき)」

「おし」

大輝は守備範囲が広く、それでいて頭の回転が早い。

性格は大人しく、常に冷静沈着だ。

必要以外な事は、あまり口を開かないタイプ。

問題は、次だ。

おれは監督の口元を睨み付けながら、ごくりと大きな唾を飲み込んだ。

修司。

あいつと同じポジションを守るのは、誰なんだろうか。

「次、8番。センター、岩崎勇気(いわさきゆうき)。岩崎も1年か。しっかりな、野外の要だからな」

「はいっ!」

嬉しかった。

勇気が背番号8を背負うことが自分の事のように嬉しくて、おれは健吾と勇気と抱き合った。

勇気はおれと健吾と修司が可愛がっていた、同じ中学出身の後輩だ。

おれ達が中学を去る卒業式の日、涙をこらえて勇気は言った。





―おれも南高校受験します! 夏井先輩と岩渕先輩を追い掛ける―





そして、今年の春、南高校に入学してきた勇気は言った。





―来ました! 一緒に甲子園目指しましょう―





なんて生意気なやつだと笑った。

でも、なんて可愛い後輩を持ったんだろうかと、おれは誇らしげな気分に酔いしれた。

生意気な口ばかりきく勇気だけど、でも、おれ達の可愛い後輩なのだ。

「次、9番。ライト、左藤昌樹(さとうまさき)」

「うっす」

昌樹はとにかくひょうきんなやつで、でも、野球センスはピカイチのこれまた野球馬鹿野郎である。

今まで呼ばれたメンバー達はギャアギャア騒ぎながら、グラウンド内をじゃれあいながら走り回っていた。

でも、おれと健吾は違った。

たぶん、横に居る東野翼(とうのつばさ)も。