DATE 7/22 10:21
From 吉田翠
Sub 愛しの妻より
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話は健吾から聞いた!
あたしは補欠命よ。
安心しちゃってベイベー!






おれは返信もせず、すぐに携帯電話をバタリと折り畳み、授業放棄する事にした。

「人の気も知らねえで」

これじゃ、ただの阿呆じゃないか。

くだらないやきもちばかり焼いて。

欲しいおもちゃを買ってもらえない子供が、いつまでも反抗しているようなものだ。

昼休み、翠の顔を見るのが怖い。

不快な気持ちを不快な言葉にしてぶつけてしまいそうで。

翠の笑顔を曇らせてしまいそうで、怖い。

古文の授業中は、ただひたすら祈った。

昼休みが来ないように。

時間が止まってくれるように。

真っ白なキャンパスノートの上に乱暴に投げ出された水色のシャープペンシルが、情けなさを際立たせていた。

どんなに願っても祈っても時間は刻一刻と迫り、来て欲しくない昼休みが訪れた。

廊下から、豪快な足音が地響きのように聞こえてくる。

「ちょっと、補欠! あんた、この翠様のメール、シカトか?」

ぶっ殺されたいの? 、と翠は不機嫌な顔をして、いつものようにおれ達の教室に弁当を抱えて突入してきた。

次いで、呆れ顔の健吾も。

「ハアイ! 花菜ちん、おまっとさーん」

目も合わせようとしないおれに、チッと舌打ちしながら翠は花菜の隣の椅子に腰を下ろした。

おれの大好きなアプリコットのような匂いも、今日はやけにすすけた感じに香ってくる。

「響也、機嫌悪いじゃん」

何かあったの? 、と花菜が訊いた。

おれは仏頂面のまま、視線を窓の外に飛ばした。

あったもくそもない。

大有りだ。

仏頂面で窓の外ばかりを見るおれの横で、健吾が要らない説明を始めた。

「やきもち、やきもち。翠が他の男と仲良くしてんの見て、いじけてんの」

「いちいちうるせえな。だから、違うって言ってるだろ」

そう言って、おれは健吾を睨み付けた。