「はいはい」
「あ、コーラね! コーラ」
「はいはい」
バッティングに夢中になっている翠を置いて、カウンターに向かって歩いている時、不意に声を掛けられておれは振り向いた。
「響也?」
ひどく懐かしい、2年ほど前の記憶が一気に甦り、おれの体を支配した。
「修司(しゅうじ」
そこに立っていたのは2年ほど前に同じグラウンドで、同じ白球を追い掛けていた平野修司(ひらのしゅうじ)だった。
「響也! 久しぶりだな」
こんがりと太陽に焼けた笑顔は、中学の頃と何一つ変わっていなかった。
でも、修司の体は一回りも二回りもでかくなっていた。
「修司! 久しぶりだなあ、メールくらいくれよ」
「悪い。練習漬けの毎日でさ。もう、夜はヘトヘトなんだわ」
おれと修司は会えなかった分の距離を縮めるように、あまりにも自然に手をとり合っていた。
少し垂れがちな目尻も、笑うと片方にだけできるえくぼも。
俳優のような爽やかな顔立ちも。
全然、変わってない。
修司は中学時代、おれの真後ろを守備していた。
外野の要、センターで4番だった。
頼れる中堅手だった。
中学卒業を期に、おれと健吾は地元の南高校に進学し、修司は電車で1時間以上も離れている、私立桜花大学附属高等学校に進学した。
仲良しだった部員達も各々の道へ進み、みんなバラバラになった。
県外の高校に進学したやつもいたし、野球から足を洗ったやつもいる。
その中でも修司はおれと健吾と特に仲が良くて、良い事も悪い事も悪戯も、全部一緒にやってきた。
健吾、おれ、修司。
捕手、投手、中堅手。
中学3年間、最高で最強のライン上でおれ達3人は同じ一球を追い掛け続けた。
おれと健吾が南高校へ進学すると言い出した時、勿論、修司も一緒に来るものだとばかり思っていた。
また同じライン上で、3人は野球をするんだと思っていた。
おれも健吾も、そう自惚れていた。
でも、違った。
修司の口を突いて出た道は、桜花大学附属高等の野球部に入りたいんだ、だった。
「あ、コーラね! コーラ」
「はいはい」
バッティングに夢中になっている翠を置いて、カウンターに向かって歩いている時、不意に声を掛けられておれは振り向いた。
「響也?」
ひどく懐かしい、2年ほど前の記憶が一気に甦り、おれの体を支配した。
「修司(しゅうじ」
そこに立っていたのは2年ほど前に同じグラウンドで、同じ白球を追い掛けていた平野修司(ひらのしゅうじ)だった。
「響也! 久しぶりだな」
こんがりと太陽に焼けた笑顔は、中学の頃と何一つ変わっていなかった。
でも、修司の体は一回りも二回りもでかくなっていた。
「修司! 久しぶりだなあ、メールくらいくれよ」
「悪い。練習漬けの毎日でさ。もう、夜はヘトヘトなんだわ」
おれと修司は会えなかった分の距離を縮めるように、あまりにも自然に手をとり合っていた。
少し垂れがちな目尻も、笑うと片方にだけできるえくぼも。
俳優のような爽やかな顔立ちも。
全然、変わってない。
修司は中学時代、おれの真後ろを守備していた。
外野の要、センターで4番だった。
頼れる中堅手だった。
中学卒業を期に、おれと健吾は地元の南高校に進学し、修司は電車で1時間以上も離れている、私立桜花大学附属高等学校に進学した。
仲良しだった部員達も各々の道へ進み、みんなバラバラになった。
県外の高校に進学したやつもいたし、野球から足を洗ったやつもいる。
その中でも修司はおれと健吾と特に仲が良くて、良い事も悪い事も悪戯も、全部一緒にやってきた。
健吾、おれ、修司。
捕手、投手、中堅手。
中学3年間、最高で最強のライン上でおれ達3人は同じ一球を追い掛け続けた。
おれと健吾が南高校へ進学すると言い出した時、勿論、修司も一緒に来るものだとばかり思っていた。
また同じライン上で、3人は野球をするんだと思っていた。
おれも健吾も、そう自惚れていた。
でも、違った。
修司の口を突いて出た道は、桜花大学附属高等の野球部に入りたいんだ、だった。