背が170センチ弱あるおれより頭半分だけ小さい翠は、華奢な体型で、初雪のように色白な肌をしている。

翠の友達の佐東結衣(さとうゆい)は、赤毛のショートヘアーがトレードマークだ。

アニメの声優のようなきんきん声をしている。

背が小さく、小動物みたいだ。

三船明里(みふねあかり)は15歳のわりに大人びていて、胸下までの黒いロングヘアーがよく似合っている。

魔女のような雰囲気で、銀座の高級グラブのママのような、艶やかな品がある。

ドレスよりも、断然、和装が似合うような女だ。

3人は、いつも一緒だ。

校則違反常習者のギャル達だ。

半歩間違えれば、水商売女子高生、と言われても過言ではないかもしれない。

これほど派手だとクラスに沈めずに浮くのでは、と思われがちだろう。

しかし、3人は沈むどころか完璧に溶け込んでいて、1年B組のムードメイカーなのだった。

男女隔たりなく人気がある。

突然、突風の如くぎゃあぎゃあと騒ぎ出したのは、勿論、翠だった。

「明里の彼氏、イッケメーン! タッキーよ、タッキー! ほら、見てよ、結衣」

「どわー! まじだしいっ」

と結衣が続き、ハスキーな声で続けたのは、少し困り顔の明里だった。

「勝手に見ないでよ! 翠にはプライバシーってもの、無いわけ?」

「無い」

翠は即答し、その、いわゆるプリクラ手帳という分厚いやつを明里から取り上げ、机の上に飛び乗ってげらげらと豪快に笑った。

あれじゃあ、お立ち台だ。

その光景にクラス中が呆れたと言わんばかりに溜息して、クスクス笑っている。

毎日の事だから、今さら驚く者は1人として居ない。

「じゃあ何か? タッキー似の彼氏ってことは……その友達はツバサに似てるとか?」

そう言って、翠はギャハハハと下品に笑った。

華奢な体を後ろに反らせて、喉の奥を見せながら。

そんな翠からプリクラ手帳を奪い返そうとする明里を、結衣が押さえ込み羽交い締めにして騒いでいる。

ここは女の動物園かよ、とおれは胸の内でこっそり笑った。

堂々と笑ったりしたら危険だから。