「ありがとうございます! お陰様で復活しました」
グッと拳を握ってみせると、光輝さんは私を見て目を丸くし、その場でゆっくり膝をついて「良かったぁ……」と呟いた。
私は光輝さんに歩み寄り、彼の前でしゃがみ込む。
「こうやって元気になりましたし、もう責任を感じなくていいですからね」
声を掛けると、光輝さんは泣きそうに表情を歪める。
「でも、本当にすまなかった。家まで送ってちゃんと親御さんに説明を……」
「駄目です!」
そこまで言った光輝さんに、私はピシャッと言う。
「カクが言ったように、ここから先は現実の話になります。……私は一週間行方不明になって、自力で家に帰宅します。その時に光輝さんが隣にいて『自分のせいだ』って言ったらどうなります? 警察に事情聴取されて、会社も橋川神社にも迷惑をかけます。……私はなんとか誤魔化しますから、光輝さんは関わった事を明かしたら駄目です」
「……けど、けじめをつけないと……」
光輝さんは困り切った表情で溜め息をつく。
「気持ちは分かりますし、私は光輝さんのそういう所が好きです。……でも、これだけは駄目です。……償いたい気持ちがあるなら、別の機会で助けてください」
彼の目を見つめて言うと、光輝さんは渋々と頷いた。
「……分かった」
その時、凪さんが口を挟んできた。
「親御さんにはどう言って誤魔化すの?」
私は腕を組み、斜め上の空間を見ながら言う。
「うちの祖母がちょっと不思議な力を持っているんですよ。失せ物とかお産の日を言い当てる、スーパーお祖母ちゃんなんです。母もその血が流れています」
私は溜め息をつき、ソファの上で膝を抱える。
「今回みたいな出来事は、さすがに祖母も母も経験した事がないと思います。だからこそ説明しづらいけど、不思議な世界に理解があるので、何とかなるんじゃ……、と思ってます。光輝さんの家に私の体があった事は言いませんが、他の事は凪さんの店も含め、素直に話してみようかな……と。それじゃないと辻褄が合わないと思いますし」
「そっか。うまくいく事を祈るよ」
話が纏まったあと、私は光輝さんに尋ねた。
「……光輝さんは神野さんを許せますか?」
神野さんはどんな言葉も受け入れる表情で、光輝さんの返事を待っていた。
「……兄貴は最期、満足そうに逝った。誰に対しても恨み言を言わなかったんだ。……兄貴を喪った事は悲しいし、もう彼には二度と会えないし帰ってこない。……でも兄貴は、身を挺して助けた弟が人を憎み、恨んで生きていく事を望まないと思う。『幸せになれ』って言ってくれた兄貴は、憎悪も復讐も望まない」
光輝さんは大きく息を吸い、ハッキリと告げる。
「だから、許します。家族がなんと言おうが、俺は許す」
その言葉を聞き、神野さんは目を潤ませて唇を引き結んだ。
彼の様子を見て、凪さんは小さく笑う。
「……許される事が一番つらいって場合もあるよね。酷い事をして罪悪感に駆られている時、なじられたり殴られたりしたほうが楽になる時もある。でも許されると、自分の罪と向き合っていかないとならないから、一番きついんだよ」
キッチンに戻った凪さんは、卵をチャカチャカとときながら言う。
「他人に許されても、いつまでも自分を許せないのは自分だ。それだけは晶の問題だから、きちんと向き合っていきな」
「はい」
「さ、緋一と晶は朝食の支度に戻って。千秋と光輝は一仕事終えて疲れてるから、待っていていいよ」
その時、「おーい」とカクの声がした。
「ん? ちょっとカクをリモートモードにするね」
なんですと?
疑問に思っていると、凪さんはテレビ台の隣に置いてある鹿のぬいぐるみをダイニングテーブルに置くと、ポンとタッチして「どうぞ」と促した。電話の子機か!
「外で沙織と柚良がウロウロして、店を探してるよ」
その言葉を聞き、私たちは顔を見合わせる。
「凪さん、店に入れてもらってもいいですか?」
尋ねると、彼女は「構わないよ」と快諾してくれた。
立とうとすると、光輝さんと緋一さんが「俺が」と同時に言って起立した。
「千秋ちゃんは本調子じゃないから、座ってて」
「すぐ戻ってくるから」
彼らは私に言ったあと、すぐに柚良と沙織さんを伴って戻ってきた。
「柚良!」
「千秋! メッセージをくれたから、沙織さんと一緒に駆けつけたの!」
私たちは涙を浮かべて駆け寄り、抱き締め合う。
「ごめんねぇ……っ」
「元に戻って良かったーっ!」
私たちが抱き合ってピョンピョン跳びはねる一方で、緋一さんと沙織さんは「お疲れ」と言い合っていた。
グッと拳を握ってみせると、光輝さんは私を見て目を丸くし、その場でゆっくり膝をついて「良かったぁ……」と呟いた。
私は光輝さんに歩み寄り、彼の前でしゃがみ込む。
「こうやって元気になりましたし、もう責任を感じなくていいですからね」
声を掛けると、光輝さんは泣きそうに表情を歪める。
「でも、本当にすまなかった。家まで送ってちゃんと親御さんに説明を……」
「駄目です!」
そこまで言った光輝さんに、私はピシャッと言う。
「カクが言ったように、ここから先は現実の話になります。……私は一週間行方不明になって、自力で家に帰宅します。その時に光輝さんが隣にいて『自分のせいだ』って言ったらどうなります? 警察に事情聴取されて、会社も橋川神社にも迷惑をかけます。……私はなんとか誤魔化しますから、光輝さんは関わった事を明かしたら駄目です」
「……けど、けじめをつけないと……」
光輝さんは困り切った表情で溜め息をつく。
「気持ちは分かりますし、私は光輝さんのそういう所が好きです。……でも、これだけは駄目です。……償いたい気持ちがあるなら、別の機会で助けてください」
彼の目を見つめて言うと、光輝さんは渋々と頷いた。
「……分かった」
その時、凪さんが口を挟んできた。
「親御さんにはどう言って誤魔化すの?」
私は腕を組み、斜め上の空間を見ながら言う。
「うちの祖母がちょっと不思議な力を持っているんですよ。失せ物とかお産の日を言い当てる、スーパーお祖母ちゃんなんです。母もその血が流れています」
私は溜め息をつき、ソファの上で膝を抱える。
「今回みたいな出来事は、さすがに祖母も母も経験した事がないと思います。だからこそ説明しづらいけど、不思議な世界に理解があるので、何とかなるんじゃ……、と思ってます。光輝さんの家に私の体があった事は言いませんが、他の事は凪さんの店も含め、素直に話してみようかな……と。それじゃないと辻褄が合わないと思いますし」
「そっか。うまくいく事を祈るよ」
話が纏まったあと、私は光輝さんに尋ねた。
「……光輝さんは神野さんを許せますか?」
神野さんはどんな言葉も受け入れる表情で、光輝さんの返事を待っていた。
「……兄貴は最期、満足そうに逝った。誰に対しても恨み言を言わなかったんだ。……兄貴を喪った事は悲しいし、もう彼には二度と会えないし帰ってこない。……でも兄貴は、身を挺して助けた弟が人を憎み、恨んで生きていく事を望まないと思う。『幸せになれ』って言ってくれた兄貴は、憎悪も復讐も望まない」
光輝さんは大きく息を吸い、ハッキリと告げる。
「だから、許します。家族がなんと言おうが、俺は許す」
その言葉を聞き、神野さんは目を潤ませて唇を引き結んだ。
彼の様子を見て、凪さんは小さく笑う。
「……許される事が一番つらいって場合もあるよね。酷い事をして罪悪感に駆られている時、なじられたり殴られたりしたほうが楽になる時もある。でも許されると、自分の罪と向き合っていかないとならないから、一番きついんだよ」
キッチンに戻った凪さんは、卵をチャカチャカとときながら言う。
「他人に許されても、いつまでも自分を許せないのは自分だ。それだけは晶の問題だから、きちんと向き合っていきな」
「はい」
「さ、緋一と晶は朝食の支度に戻って。千秋と光輝は一仕事終えて疲れてるから、待っていていいよ」
その時、「おーい」とカクの声がした。
「ん? ちょっとカクをリモートモードにするね」
なんですと?
疑問に思っていると、凪さんはテレビ台の隣に置いてある鹿のぬいぐるみをダイニングテーブルに置くと、ポンとタッチして「どうぞ」と促した。電話の子機か!
「外で沙織と柚良がウロウロして、店を探してるよ」
その言葉を聞き、私たちは顔を見合わせる。
「凪さん、店に入れてもらってもいいですか?」
尋ねると、彼女は「構わないよ」と快諾してくれた。
立とうとすると、光輝さんと緋一さんが「俺が」と同時に言って起立した。
「千秋ちゃんは本調子じゃないから、座ってて」
「すぐ戻ってくるから」
彼らは私に言ったあと、すぐに柚良と沙織さんを伴って戻ってきた。
「柚良!」
「千秋! メッセージをくれたから、沙織さんと一緒に駆けつけたの!」
私たちは涙を浮かべて駆け寄り、抱き締め合う。
「ごめんねぇ……っ」
「元に戻って良かったーっ!」
私たちが抱き合ってピョンピョン跳びはねる一方で、緋一さんと沙織さんは「お疲れ」と言い合っていた。



