階下に降りると、凪さん、緋一さん、神野さんが朝食の準備をしていた。
「おはようございます」
挨拶をすると、皆挨拶を返してくれた。
すっかり改心したらしい神野さんは、私を見て申し訳なさそうな顔をし、頭を下げる。
「本当にすまなかった。……なんて詫びればいいか……」
私は溜め息をつき、自分に頭を下げる年上の男性を見て腕組みをする。
「……神野さんは自分の行いを恥じ、反省もしてる。……と思っていいですよね?」
「ああ」
彼は痛みの籠もった声で言い、頷く。
「凪さんが言ったように、あなたのやった事は法では裁かれません。でも、禊として壱島さんのご一家には自分の行いを包み隠さず打ち明けてください。そのあと、彼らから何か望まれたなら、受け入れてほしいです」
「そうするつもりだ」
神野さんはもう、どう償っていくかは決めているみたいだ。
「で、私の分は……、特にいいかな」
「えっ?」
そう言うと、彼は気の抜けた声を漏らし、顔を上げた。
「なんか、体に戻ったら安心しちゃって。……そりゃあ、とんでもない事に巻き込まれましたし、親友と仲違いして最悪な半年を過ごしたし『何してくれたんだコノヤロウ』って思います。……でも、神野さんにも〝事情〟はあったし、呪具に操られての事だったら何も言えなくなるじゃないですか。憑いていたものを祓われたら、神野さんも話の通じるいい人になってしまった。本人が改心してるのに、必要以上に叩いて攻撃するのって嫌なんですよ。こっちが悪役になるじゃないですか」
キッチン台に寄りかかってやり取りを見守っている凪さんと緋一さんは、黙って私の答えを聞いる。
「怒りに駆られてあなたを罵倒し、打つのは簡単です。すっごく理不尽な目に遭ったし、柚子と仲違いした期間は取り戻せない。あなたを責めて時間が戻るなら、喜んでそうします。でも、そうはいかないでしょう? ……その気になれば、私たちは幾らでもやり直せる。悪い事をしたなら反省して償い、友達と喧嘩したなら、謝って関係を再構築していけばいい。人を恨んで生きていくのはダサいから!」
言い切ると、凪さんが「偉いね」と拍手をした。
「千秋が〝許せる〟子で良かった。……ま、君はそういう子だと思っていたけどね。ちょっとおバカだけど、潔いぐらいまっすぐで曲がった事が嫌い。そんな千秋だから私も手助けしようと思った」
神野さんは私の答えが意外だったのか、呆然としている。
私は無条件で許すわけじゃないと示すために、付け加えた。
「凪さんは神野さんをこき使うと言っていたので、彼女に絶対服従するのが条件です。会社を辞めてこの店を手伝う事は、普通の人生から外れる覚悟を決めての事だと思いますし、常識では説明がつかない事に巻き込まれる可能性もあります。……でも凪さんはあなたを守ると思います。だからいつか凪さんが『もういいよ』と言うまで、彼女の手伝いをして困った人を助けてください」
「分かった。そうする」
彼は覚悟を決めた表情で頷いた。
その時、店のほうからカクが「お客様のご来店~!」と告げたのが聞こえた。
まさか……。
ドアのほうを見ると、私服姿の光輝さんが息を乱して現れた。
「勝手に入ってすみません! 千秋ちゃんがどうなったか気になって!」
彼は走ってきたのか、髪をクシャクシャに乱している。
そこまで心配してくれたのだと思うと嬉しくなり、私は笑顔になった。
「おはようございます」
挨拶をすると、皆挨拶を返してくれた。
すっかり改心したらしい神野さんは、私を見て申し訳なさそうな顔をし、頭を下げる。
「本当にすまなかった。……なんて詫びればいいか……」
私は溜め息をつき、自分に頭を下げる年上の男性を見て腕組みをする。
「……神野さんは自分の行いを恥じ、反省もしてる。……と思っていいですよね?」
「ああ」
彼は痛みの籠もった声で言い、頷く。
「凪さんが言ったように、あなたのやった事は法では裁かれません。でも、禊として壱島さんのご一家には自分の行いを包み隠さず打ち明けてください。そのあと、彼らから何か望まれたなら、受け入れてほしいです」
「そうするつもりだ」
神野さんはもう、どう償っていくかは決めているみたいだ。
「で、私の分は……、特にいいかな」
「えっ?」
そう言うと、彼は気の抜けた声を漏らし、顔を上げた。
「なんか、体に戻ったら安心しちゃって。……そりゃあ、とんでもない事に巻き込まれましたし、親友と仲違いして最悪な半年を過ごしたし『何してくれたんだコノヤロウ』って思います。……でも、神野さんにも〝事情〟はあったし、呪具に操られての事だったら何も言えなくなるじゃないですか。憑いていたものを祓われたら、神野さんも話の通じるいい人になってしまった。本人が改心してるのに、必要以上に叩いて攻撃するのって嫌なんですよ。こっちが悪役になるじゃないですか」
キッチン台に寄りかかってやり取りを見守っている凪さんと緋一さんは、黙って私の答えを聞いる。
「怒りに駆られてあなたを罵倒し、打つのは簡単です。すっごく理不尽な目に遭ったし、柚子と仲違いした期間は取り戻せない。あなたを責めて時間が戻るなら、喜んでそうします。でも、そうはいかないでしょう? ……その気になれば、私たちは幾らでもやり直せる。悪い事をしたなら反省して償い、友達と喧嘩したなら、謝って関係を再構築していけばいい。人を恨んで生きていくのはダサいから!」
言い切ると、凪さんが「偉いね」と拍手をした。
「千秋が〝許せる〟子で良かった。……ま、君はそういう子だと思っていたけどね。ちょっとおバカだけど、潔いぐらいまっすぐで曲がった事が嫌い。そんな千秋だから私も手助けしようと思った」
神野さんは私の答えが意外だったのか、呆然としている。
私は無条件で許すわけじゃないと示すために、付け加えた。
「凪さんは神野さんをこき使うと言っていたので、彼女に絶対服従するのが条件です。会社を辞めてこの店を手伝う事は、普通の人生から外れる覚悟を決めての事だと思いますし、常識では説明がつかない事に巻き込まれる可能性もあります。……でも凪さんはあなたを守ると思います。だからいつか凪さんが『もういいよ』と言うまで、彼女の手伝いをして困った人を助けてください」
「分かった。そうする」
彼は覚悟を決めた表情で頷いた。
その時、店のほうからカクが「お客様のご来店~!」と告げたのが聞こえた。
まさか……。
ドアのほうを見ると、私服姿の光輝さんが息を乱して現れた。
「勝手に入ってすみません! 千秋ちゃんがどうなったか気になって!」
彼は走ってきたのか、髪をクシャクシャに乱している。
そこまで心配してくれたのだと思うと嬉しくなり、私は笑顔になった。



