ペンダントの先端には黒っぽい石がついていて、天然石やその類いの物に見える。
『これは願いを叶える石です。……なんて言ったら怪しさ満点でしょうけど、本当なんですよ。僕は神野さんが考える通り、占い師みたいなものです。商売として色んな物を売っているんですが、中にはまだ効果がよく分からない物がありましてね。……そのモニターとして使っていただけたらなー……、と思ったんですが』
『胡散臭……』
思わず呟くと、男は『でしょー』と悪びれもせず笑う。
『物は試しに一週間つけてみませんか? 感想をお聞きしたいんです。何も変わらなかったならインチキと思ってくださって構いません』
『……それだけでいいのか?』
『スピリチュアルなものを信じる方って、手首にパワーストーンのブレスレットをしているじゃないですか。ああいう物だと思ってくだされば結構です』
『それなら……』と思う自分がいた。ペンダントをつけるだけなら害はないし、何も起こらなかったら突き返せばいい。
『あとでモニター料をとるのか?』
『まさか! こちらは試作品なので、本当にどういう効果をもたらすか人様に体験していただきたいだけなんです』
『タダならいいけど……』
『ありがとうございます! じゃあ一週間後、ここで待っていますね』
そのあと男は席を離れていった。
どうせでたらめに決まっている。そう思うのに、ペンダントを持っているとやけに気分が高揚した。
その後、驚くべき出来事が起こった。
あのキャバ嬢が【最近どうしてるの? 会いたい】と連絡をよこし、恐る恐る会いに行くと、その夜にお持ち帰りできた。それだけではなく、うまくいけばいいと願っていた商談が纏まり、大口契約ができた。バーに行く前日には、試しに買ったスクラッチくじで五万円が当たり、『これは本物だ』と確信した。
意気揚々とバーに向かうと、前回と変わらない服装の男が隣に座ってきた。
『如何でした?』
『……悔しいが、本物だった』
俺は興奮を押し隠し、一週間に起こった出来事を饒舌に語る。
すると男はにんまりと笑い、ポケットからさらに三つのペンダントを出した。
『追加は如何でしょう? 最初の一つは無料ですが、こちらの三つは有料です』
『買っても構わないが、特に幸せを分けてやりたい奴なんていないしな……』
そう呟くと、男は俺の望みを読んだかのように言った。
『このペンダントは身につけた人の望みを増幅させます。つけた人の願いを叶えるのは勿論、言う事を聞かせたい相手に念じて渡せば、催眠のようなものをかけられます』
『……マジか?』
言われて脳裏によぎったのは、あの忌々しい緋一を〝嫌な男〟にしたいという願いだ。
緋一以外の奴も、自分の言いなりにできると思うと、とても魅力的に感じられた。
だが……、と逡巡していると、男は見透かしたように笑う。
『僕はペンダントをどう使っても口出しません。ですが、クレームも受け付けません。〝何か〟起こっても、ペンダントごときで警察は動きませんしね。……どうです?』
『……一つ幾らだ?』
慎重に尋ねると、男はニカッと笑ってピースサインをした。
『一つ二万円でどうですか? 本当は一つ十万円と言いたいんですけど、モニターを請け負ってくださったのでお安くしておきます』
『言い値で買おう』
すると男は『ありがとうございます』と微笑んで、カウンターの上に置いたペンダント三つを押しやった。俺は財布から六万円を出し、男に渡す。
『もしも良くない事が起こった時は、ペンダントを外してください。手放す時は燃えないゴミに。あと、四つ着けても、幸運が四倍にはなりませんからね。一人一つです』
『分かった』
男は『まいどあり』と言って金をしまい、『幸運を』と言い残して去っていった。
俺はペンダントを手にして無敵感を抱き、それらをまとめて胸ポケットに入れた。
その後、ペンダントの一つを緋一用にした。
奴は俺に嫌われている事を自覚していたようだが、ポケットの中でペンダントを握って話しかけたら、何を言っても『はい』と笑顔で頷くようになった。
『これは願いを叶える石です。……なんて言ったら怪しさ満点でしょうけど、本当なんですよ。僕は神野さんが考える通り、占い師みたいなものです。商売として色んな物を売っているんですが、中にはまだ効果がよく分からない物がありましてね。……そのモニターとして使っていただけたらなー……、と思ったんですが』
『胡散臭……』
思わず呟くと、男は『でしょー』と悪びれもせず笑う。
『物は試しに一週間つけてみませんか? 感想をお聞きしたいんです。何も変わらなかったならインチキと思ってくださって構いません』
『……それだけでいいのか?』
『スピリチュアルなものを信じる方って、手首にパワーストーンのブレスレットをしているじゃないですか。ああいう物だと思ってくだされば結構です』
『それなら……』と思う自分がいた。ペンダントをつけるだけなら害はないし、何も起こらなかったら突き返せばいい。
『あとでモニター料をとるのか?』
『まさか! こちらは試作品なので、本当にどういう効果をもたらすか人様に体験していただきたいだけなんです』
『タダならいいけど……』
『ありがとうございます! じゃあ一週間後、ここで待っていますね』
そのあと男は席を離れていった。
どうせでたらめに決まっている。そう思うのに、ペンダントを持っているとやけに気分が高揚した。
その後、驚くべき出来事が起こった。
あのキャバ嬢が【最近どうしてるの? 会いたい】と連絡をよこし、恐る恐る会いに行くと、その夜にお持ち帰りできた。それだけではなく、うまくいけばいいと願っていた商談が纏まり、大口契約ができた。バーに行く前日には、試しに買ったスクラッチくじで五万円が当たり、『これは本物だ』と確信した。
意気揚々とバーに向かうと、前回と変わらない服装の男が隣に座ってきた。
『如何でした?』
『……悔しいが、本物だった』
俺は興奮を押し隠し、一週間に起こった出来事を饒舌に語る。
すると男はにんまりと笑い、ポケットからさらに三つのペンダントを出した。
『追加は如何でしょう? 最初の一つは無料ですが、こちらの三つは有料です』
『買っても構わないが、特に幸せを分けてやりたい奴なんていないしな……』
そう呟くと、男は俺の望みを読んだかのように言った。
『このペンダントは身につけた人の望みを増幅させます。つけた人の願いを叶えるのは勿論、言う事を聞かせたい相手に念じて渡せば、催眠のようなものをかけられます』
『……マジか?』
言われて脳裏によぎったのは、あの忌々しい緋一を〝嫌な男〟にしたいという願いだ。
緋一以外の奴も、自分の言いなりにできると思うと、とても魅力的に感じられた。
だが……、と逡巡していると、男は見透かしたように笑う。
『僕はペンダントをどう使っても口出しません。ですが、クレームも受け付けません。〝何か〟起こっても、ペンダントごときで警察は動きませんしね。……どうです?』
『……一つ幾らだ?』
慎重に尋ねると、男はニカッと笑ってピースサインをした。
『一つ二万円でどうですか? 本当は一つ十万円と言いたいんですけど、モニターを請け負ってくださったのでお安くしておきます』
『言い値で買おう』
すると男は『ありがとうございます』と微笑んで、カウンターの上に置いたペンダント三つを押しやった。俺は財布から六万円を出し、男に渡す。
『もしも良くない事が起こった時は、ペンダントを外してください。手放す時は燃えないゴミに。あと、四つ着けても、幸運が四倍にはなりませんからね。一人一つです』
『分かった』
男は『まいどあり』と言って金をしまい、『幸運を』と言い残して去っていった。
俺はペンダントを手にして無敵感を抱き、それらをまとめて胸ポケットに入れた。
その後、ペンダントの一つを緋一用にした。
奴は俺に嫌われている事を自覚していたようだが、ポケットの中でペンダントを握って話しかけたら、何を言っても『はい』と笑顔で頷くようになった。



