『あなた、運気が落ちてますね』
『はぁ? 占いならお断りだけど』
『まぁまぁ。……占いと仰るならそういう事にしておきますけど、信じていただくためにズバッと当てましょうか』
胡散臭い男を改めて見ると、黒いパーカーに黒いパンツ姿で、パーカーの下にはキャップを被り、その陰からは長めの前髪と眼鏡が覗いていた。
顔を見てやろうと思ったが、店内が薄暗いのも相まってよく分からない。
分かるのは中肉中背だという事と、鼻から口にかけての印象で、そう不細工ではなさそうだという事だけだ。
俺はいきなり話しかけてきた奴をマスターが注意しないかチラッと視線を送ったが、彼は黙々と仕事をしていた。
『お母様を亡くされていますね?』
いきなり言い当てられ、俺は酒を飲もうとした手を止める。
真顔になって男を見たからか、奴は明るく笑った。
『あはは! 僕を占い師だと思うなら、そういう反応をしたら駄目ですよ。占い師はコールドリーディングと言って、相手の反応や言葉から背景を読みます。そこであなたが〝そうなんですよ、良く分かりましたね〟と昔話をし始めたら、その口調や雰囲気からどういうご家庭だったかを読み解かれます』
懇切丁寧に解説され、俺は舌打ちをすると前を向く。
『いい企業にお勤めで仕事もできる方ですね。でも結婚指輪がないから独身』
ムカつく事を言い当てられ、俺は男を無視して酒を飲む。
『面白くない事があったようですね。……たとえば自分より優秀な部下がいて、その人に自分の居場所を奪われたように感じているとか』
そう言われ、ドキッとした俺は少し固まる。
(いや、待て。つまらなさそうにしているから、適当に想像して言っているだけだ。こいつの口車に乗ったら、壷でも買わされるんじゃないか?)
そう思ったものの、次の言葉を聞いてギョッとした。
『相手の名前は猟沢緋一さん。……壱島光輝さんという神社の息子さんもいるかな? 皆さん、森浜フーズにお勤めですね』
『……どうして……』
俺は純粋な驚きで目を見開き、凍り付いたように男を凝視する。ある程度の事を想像できても、関係者の名前や社名を言い当てるなんて不可能だ。
『……ストーカーか?』
警戒して尋ねると、男は明るく笑った。
『やだなぁ。男をストーカーして何になるんですか? 僕はあなたの事を好きでもないし、恨みもない。本当に今日たまたまこの店で遭遇しただけの無関係な人間です』
そう説明されるも、気持ち悪いぐらいに言い当てられると疑念しか残らない。
『……何が望みだ?』
こいつが本物であろうが偽物であろうが、望みがあって近づいてきたのは間違いない。関わりたいから声を掛けるのであって、用事が無いならこんな茶番を演じる必要はない。
男はニヤリと笑い、ポケットからペンダントを出してカウンターの上に置いた。
『はぁ? 占いならお断りだけど』
『まぁまぁ。……占いと仰るならそういう事にしておきますけど、信じていただくためにズバッと当てましょうか』
胡散臭い男を改めて見ると、黒いパーカーに黒いパンツ姿で、パーカーの下にはキャップを被り、その陰からは長めの前髪と眼鏡が覗いていた。
顔を見てやろうと思ったが、店内が薄暗いのも相まってよく分からない。
分かるのは中肉中背だという事と、鼻から口にかけての印象で、そう不細工ではなさそうだという事だけだ。
俺はいきなり話しかけてきた奴をマスターが注意しないかチラッと視線を送ったが、彼は黙々と仕事をしていた。
『お母様を亡くされていますね?』
いきなり言い当てられ、俺は酒を飲もうとした手を止める。
真顔になって男を見たからか、奴は明るく笑った。
『あはは! 僕を占い師だと思うなら、そういう反応をしたら駄目ですよ。占い師はコールドリーディングと言って、相手の反応や言葉から背景を読みます。そこであなたが〝そうなんですよ、良く分かりましたね〟と昔話をし始めたら、その口調や雰囲気からどういうご家庭だったかを読み解かれます』
懇切丁寧に解説され、俺は舌打ちをすると前を向く。
『いい企業にお勤めで仕事もできる方ですね。でも結婚指輪がないから独身』
ムカつく事を言い当てられ、俺は男を無視して酒を飲む。
『面白くない事があったようですね。……たとえば自分より優秀な部下がいて、その人に自分の居場所を奪われたように感じているとか』
そう言われ、ドキッとした俺は少し固まる。
(いや、待て。つまらなさそうにしているから、適当に想像して言っているだけだ。こいつの口車に乗ったら、壷でも買わされるんじゃないか?)
そう思ったものの、次の言葉を聞いてギョッとした。
『相手の名前は猟沢緋一さん。……壱島光輝さんという神社の息子さんもいるかな? 皆さん、森浜フーズにお勤めですね』
『……どうして……』
俺は純粋な驚きで目を見開き、凍り付いたように男を凝視する。ある程度の事を想像できても、関係者の名前や社名を言い当てるなんて不可能だ。
『……ストーカーか?』
警戒して尋ねると、男は明るく笑った。
『やだなぁ。男をストーカーして何になるんですか? 僕はあなたの事を好きでもないし、恨みもない。本当に今日たまたまこの店で遭遇しただけの無関係な人間です』
そう説明されるも、気持ち悪いぐらいに言い当てられると疑念しか残らない。
『……何が望みだ?』
こいつが本物であろうが偽物であろうが、望みがあって近づいてきたのは間違いない。関わりたいから声を掛けるのであって、用事が無いならこんな茶番を演じる必要はない。
男はニヤリと笑い、ポケットからペンダントを出してカウンターの上に置いた。



