「おかえり」
迎えてくれた凪さんはいつも通りで、神野さんはまだソファで眠っているようだ。
「やっと体を取り戻したんだね、千秋」
凪さんは私を見て微笑み、「上に行くよ」と〝私〟を抱いた光輝さんに上階を示した。
光輝さんは階段を上がると、以前私が泊まった部屋のベッドに〝私〟を横たえる。
「ここから先は私がやるから、メンズ二人は帰ってもいいよ」
「いえ、責任がありますから」
光輝さんは強張った表情で青ざめた〝私〟を見る。
「俺も、関わったなら最後まで見届けます。……それに神野さんも心配ですし、彼から話を聞きたいです」
緋一さんも言い、凪さんは溜め息をついて結論を出した。
「なんなら泊まってく? 神野くんはもう少しで目覚めるだろうけど、千秋は一晩かかるかな。今夜はうちでご飯でも食べて、目が覚めた神野くんから話を聞いて、体に戻った千秋と一緒に帰りなよ」
「ご厚意に甘えさせていただきます」
頭を下げた二人は、凪さんの世話になると決めたようだった。
「千秋にまじないを施しておくから、二人はリビングで待っていてくれる?」
「はい」
答えた二人は階段を下りていく。私は椅子に座って自分の体を見つめながら、〝私〟の居場所を教えてくれたあの迷い人の事を考えていた。
やがて凪さんが戻り、彼女はテーブルの上にアロマキャンドルを置いて火を点ける。
するとフワッとラベンダーのいい香りがした。きっとこれも浄化作用のためだろう。
同時に彼女は小さなお茶碗に盛られた白ご飯、お酒、塩、水、榊の入った瓶をテーブルの上に置いた。
「これは伊邪那美命へのお供え物だよ。千秋は完全に死んではいないけど、彼女は千秋を自分のものにしようと狙っている。だから代わりにお供え物をいただいてもらう事で、満足してもらうんだ」
「わあ……」
私は黄泉の国の女神の名前を聞き、ブルッと体を震わせる。
そのあと彼女は呪具の香炉の周り四箇所にお酒の入った小皿を置き、香炉にも何かのオイルを掛けて呪文を唱える。すると、白い小皿に入ったお酒がジワァ……と黒く染まり、墨汁のように真っ黒になってしまった。
「うわ……、えぐ……」
凪さんは香炉にお札に似た、複雑な絵柄の入ったシールを貼る。
「これで香炉の封印は完了。……さて、次は千秋だ」
凪さんは〝私〟の額にオイルを垂らし、クルクルと円を描くように指先で伸ばしつつ呪文を唱える。同様に掌、靴下を脱がせた足の裏にもオイルを塗って呪文を唱えた。
「生命エネルギーの入り口を作ったから、少しずつ生気を取り戻していくだろう。……それまで、下でご飯でも食べてようか」
「そんなんでいいんですか?」
「割とシンプルな解決法って多いんだよ」
凪さんは明るく言い、トントンと軽い足音を立てて階段を下りていく。
私は自分の体を見たあと、凪さんのテリトリーなら大丈夫だと思って階下に向かった。
迎えてくれた凪さんはいつも通りで、神野さんはまだソファで眠っているようだ。
「やっと体を取り戻したんだね、千秋」
凪さんは私を見て微笑み、「上に行くよ」と〝私〟を抱いた光輝さんに上階を示した。
光輝さんは階段を上がると、以前私が泊まった部屋のベッドに〝私〟を横たえる。
「ここから先は私がやるから、メンズ二人は帰ってもいいよ」
「いえ、責任がありますから」
光輝さんは強張った表情で青ざめた〝私〟を見る。
「俺も、関わったなら最後まで見届けます。……それに神野さんも心配ですし、彼から話を聞きたいです」
緋一さんも言い、凪さんは溜め息をついて結論を出した。
「なんなら泊まってく? 神野くんはもう少しで目覚めるだろうけど、千秋は一晩かかるかな。今夜はうちでご飯でも食べて、目が覚めた神野くんから話を聞いて、体に戻った千秋と一緒に帰りなよ」
「ご厚意に甘えさせていただきます」
頭を下げた二人は、凪さんの世話になると決めたようだった。
「千秋にまじないを施しておくから、二人はリビングで待っていてくれる?」
「はい」
答えた二人は階段を下りていく。私は椅子に座って自分の体を見つめながら、〝私〟の居場所を教えてくれたあの迷い人の事を考えていた。
やがて凪さんが戻り、彼女はテーブルの上にアロマキャンドルを置いて火を点ける。
するとフワッとラベンダーのいい香りがした。きっとこれも浄化作用のためだろう。
同時に彼女は小さなお茶碗に盛られた白ご飯、お酒、塩、水、榊の入った瓶をテーブルの上に置いた。
「これは伊邪那美命へのお供え物だよ。千秋は完全に死んではいないけど、彼女は千秋を自分のものにしようと狙っている。だから代わりにお供え物をいただいてもらう事で、満足してもらうんだ」
「わあ……」
私は黄泉の国の女神の名前を聞き、ブルッと体を震わせる。
そのあと彼女は呪具の香炉の周り四箇所にお酒の入った小皿を置き、香炉にも何かのオイルを掛けて呪文を唱える。すると、白い小皿に入ったお酒がジワァ……と黒く染まり、墨汁のように真っ黒になってしまった。
「うわ……、えぐ……」
凪さんは香炉にお札に似た、複雑な絵柄の入ったシールを貼る。
「これで香炉の封印は完了。……さて、次は千秋だ」
凪さんは〝私〟の額にオイルを垂らし、クルクルと円を描くように指先で伸ばしつつ呪文を唱える。同様に掌、靴下を脱がせた足の裏にもオイルを塗って呪文を唱えた。
「生命エネルギーの入り口を作ったから、少しずつ生気を取り戻していくだろう。……それまで、下でご飯でも食べてようか」
「そんなんでいいんですか?」
「割とシンプルな解決法って多いんだよ」
凪さんは明るく言い、トントンと軽い足音を立てて階段を下りていく。
私は自分の体を見たあと、凪さんのテリトリーなら大丈夫だと思って階下に向かった。



